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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
プロ野球スカウトに聞いた「この春、一番見たい高校球児は?」 これが今秋ドラフト候補“10人の高校生投手”「オリックス宮城のような左腕も」
text by

安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2022/04/29 17:03

プロ野球スカウトも注目する大野稼頭央(大島高〔鹿児島〕・175cm68kg・左投左打)
【投手編9】森山暁生(阿南光高〔徳島〕・182cm82kg・左投左打)
1996年の夏の甲子園に出場した新野(あらたの)高と、巨人のリリーフで奮投した條辺剛投手をOBにもつ阿南工業高が統合した阿南光高。「あなんひかり」と読む。
昨夏の甲子園予選、鳴門渦潮、徳島商、生光学園と強豪3校をわずか合計3失点に抑え、36イニングを1人で投げ抜いてチームを初の甲子園に導いた森山投手。スライダー、カーブ、ツーシームにカットボール……それぞれに確かな球筋を描いて、その投球センスが光った。
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速球のアベレージが5キロ近くアップした今春。緩急が冴えて、県大会では早くも20奪三振をマーク。
昨秋の終わり、中国・四国担当のあるスカウトに訊いた。春になって一番最初に見に行きたい選手は? 即答で「まず、阿南光の左!」だった。「やっぱりね……」納得のつぶやきが聞こえてくるようだ。
【投手編10】大野稼頭央(大島高〔鹿児島〕・175cm68kg・左投左打)
奄美大島から一般枠で初のセンバツ出場、名前を西武・松井稼頭央選手のファンだったお父さんが名付けた……野球の実力以外のところで話題になっていた選手だが、昨秋の九州大会から私自身がファンになるほどの「実力者」だ。
私には「今宮健太(ソフトバンク)」に見える。投打の右と左が違うだけ……投げさせても、打たせても、走らせても、外野を守らせても、どう動いてもすべてかっこよく、絵になる。
真っ黒に日焼けした精悍なマスク、ムダなものをすべて削ぎ取ったようなシャープなユニフォーム姿。大分・明豊高の頃の今宮選手のエネルギッシュなプレーがぴったり重なる。
7、8分の力感から140キロ前半の快速球が投げられて、やはり軽く振り抜いた打球があっという間に外野フェンスに届く。聞けば握力70キロ以上。それ以上に驚いたのが、このセンバツだ。初回の立ち上がりから、左打者の内角にズバズバきめた投球技術だ。調整不足の春先にこんな芸当ができるだけで立派な才能。高いレベルで、左腕が働けるどうかの分岐点になる高度な技術を、今から身につけている。
「次点」というわけではないが、越井颯一郎(木更津総合高)、富田遼弥(鳴門高)……センバツで豊かな潜在能力の片鱗を見せた快腕たちもいて、この春以降の進境次第で、もしかしたら夏までに、この「10人」の半数ほどの顔ぶれが変わらないとも限らない。
それだけに、高校野球の日々の展開は目を離すことができず、興味深い。
<野手編へ続く>
