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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
プロ野球スカウトに聞いた「この春、一番見たい高校球児は?」 これが今秋ドラフト候補“10人の高校生投手”「オリックス宮城のような左腕も」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2022/04/29 17:03
プロ野球スカウトも注目する大野稼頭央(大島高〔鹿児島〕・175cm68kg・左投左打)
【投手編3】宮城誇南(浦和学院〔埼玉〕・173cm75kg・左投左打)
この春のセンバツ、3試合の23と1/3イニングで27奪三振の、わずか3四球。調整不十分のはずの春先に、これだけ四球を出さずに三振の山を築く高校生左腕……過去にいただろうか。
制球抜群の理由は投球フォーム。頭が動かず、体を開かず、左足を踏み込んでから体の左右を一気に切り返すメカニズムが好制球とリリースの見にくさと、スピードガンの数字をはるかに超える体感スピードを生んで、宮城投手を攻略困難な左腕にする。
138キロの速球と120キロのカーブが同じ腕の振りで投げられ、スライダーでもいつでもストライクがとれるから、たまにピンチを迎えても、描いたプラン通りに後続を断ちきり、「ピッチング」という仕事がきっちりできる。
同じ「宮城」で、同じ沖縄出身で、背格好も似たようなサウスポー……オリックス・宮城大弥の大活躍が重なって、相乗効果で評価もうなぎ登りだ。
【投手編4】田中晴也(日本文理高〔新潟〕・186cm88kg・右投左打)
マウンド上の堂々たる存在感……そこだけとれば、今年の高校3年生投手の中でNo.1に推したい。
それほどの雄大な体躯と豪快な投球フォームからの剛速球の迫力。昨秋の北信越大会、対戦した相手も誰もが知る強豪だったが、体の近くを145キロ前後の速球で突かれると、はっきり体勢がひるんでいた。これだけ大きな体の全身連動が、わずか18mほど向こうでなされて、さらにそこから長いリーチが真っ向からしなやかに振り下ろされれば、そりゃあ怖いだろう。
今年の高校3年生投手で「150キロ」をクリアできる数少ない逸材。あとは、持ち球多彩な変化球に、何か1つ、これだ!の切り札ができてくれば。
今のプロ野球でいえば、阪神・秋山拓巳投手の西条高当時がそのまま重なる。あの頃の秋山選手も「投・打」どちらに進むのか……気にかかるほどの超高校級スラッガーだったが、田中晴也の投・打も、やはり悩めるほどのレベルにあることを書き添えておきたい。
【投手編5】マーガード真偉輝キアン(星稜高〔石川〕・184cm93kg・右投右打)
この春のセンバツ、昨秋からの変化を、最も感じたのがこの大型右腕だった。実戦経験不十分のこの時期、右打者にも左打者にも、目から遠いコースに動きの鋭いカットボールをこれだけ出し入れできる投手はいない。見事な進境だった。
125キロ前後のカットをカウント球にも勝負球にも使えるから、130キロ後半の速球で差し込める。マウンドの大きなユニフォーム姿は見るからに「剛速球投手」だが、本質はバットの芯とタイミングを外しながら投げられる「ピッチング上手」だ。
力んでやられていた昨秋の姿が別人のよう。爪を痛めるアクシデントがなかったら、まだ勝ち上がれる投手。今の、気負い過ぎない力感をキープしつつ、速球のアベレージがあと5キロ欲しい。