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巨人阪神の参入、東京ドームで決勝戦、イチローも対戦…新時代を迎えた女子野球の現在地とは? プロリーグ消滅も競技人口は300→2000
posted2022/04/27 11:00
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Women's Baseball Federation of Japan
4月3日に閉幕した全国高等学校女子硬式野球選抜大会。23回を数える同大会において東京ドームで決勝戦が行われたのは史上初だった。全日本女子野球連盟の山田博子会長は、閉会式で観客たちに語りかけた。
「“僕のお母さん、東京ドームで優勝したんだよ”と息子さんが、“お父さん、私が甲子園に連れて行ってあげるからね”と娘さんが言える時代になりました。女子野球、みんなでここまで来ました」
昨夏には全国高等学校女子硬式野球選手権大会の決勝戦が阪神甲子園球場で行われた。さらに昨年には阪神が、今年は巨人とNPB球団が続けて女子野球チームの運営に参入するなど、日本女子野球界は先人たちの歩みをより大きく発展させることができそうな転換期を迎えている。
競技人口は300→2000人
山田会長が女子野球に携わり始めたのは、2004年のこと。前職のスポーツエージェント会社の上司から、国際大会で来日したアメリカ代表の通訳を頼まれ、初めて女子野球と接した。
多忙な毎日を過ごしていた山田会長は、その後も様々な大会で女子選手たちと接する中で「女子野球に癒されたんです」と振り返る。「こんな環境でこんなに頑張っているなんて……」と女子野球の未整備な環境と彼女たちの純粋で真摯な姿勢に心が揺さぶられた。
当時の国内の女子硬式野球人口は300人いるか、いないか。それでも懸命に野球に打ち込んだ先人たちの努力が実を結び、いまや硬式をプレーしている女子選手は2000人を超え、軟式まで含めればその数はさらに増える。
現在は全国に約100の女子硬式チームが存在し、全日本女子野球連盟主催の選手権大会や各地域で開かれるリーグ戦などに出場している。また、全国高等学校女子硬式野球連盟への加盟校も43校にまで増えるなど拡大の一途を辿る。野球人口減少が叫ばれる日本野球界の中で競技人口が増えている稀有なカテゴリーであり、今後の野球界にとっても重要な役割を担っているのは間違いない。