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なぜ高卒新人18歳が「佐々木朗希の相手役」になれたのか? ロッテ松川虎生、2年前に和歌山で聞いた“高2の捕球音”が忘れられない
posted2022/04/15 17:04
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Sankei Shimbun
先に評判が聞こえてきたのは、バッテリーを組む小園健太投手(現DeNA)のほうだった。2019年の秋の頃だ。
184cm80kg。まだ1年生だが、コンスタントに140キロ前半の速球を投げて、勝負度胸も十分。その年、夏の甲子園予選でも、市立和歌山高の中心投手として、3試合すべてのマウンドに上がったという。
私が小園の姿を初めて見たのは、その翌年。コロナ禍で「甲子園」につながらなかった2020年の夏の和歌山大会。宿敵・智弁和歌山戦だ。
長身に厚みを感じる堂々としたユニフォーム姿。2年生の夏に145キロ前後の速球を続けて……決して「パワー」だけじゃない。一級品のカットボールにツーシーム、落差の大きなカーブ。ピッチングにアクセントをつけて、打者が絞りにくくする賢い投球のできる高い実戦力に感心しながら……どうしても目がいってしまうのは、バッテリーを組む松川虎生のほうだった。
当時の資料で、178cm100kg。小園投手と同じ2年生で、レギュラーマスクだった。
高2当時から「捕球音が違った」
最初に「松川捕手」を意識したのは、その捕球音だった。私自身が捕手だったせいか、聞こえてくる捕球音には敏感になっていて、彼は110キロ台のカーブでも、145キロの速球と同じ「爆音」を響かせていた。
野球の現場で「当て感」という……投球をミットの芯に当てて、投手を高揚させるような捕球音を上げられる感覚が抜群。「捕球」とは、ミットで迎えにいって捕ることじゃない。ミットを体の近くで待ち構えて、ボールを「受ける」作業だ。
ホームベースの隅にきまるカットボールやツーシームも、捕球点できっちりミットを止めて、ストライクに見せている。高校2年生で、これだけ「キャッチング」のできる捕手はそうはいない。
体重100キロでも、捕球後にスッと立ち上がる。動くことに横着しない。ボールを受けてジャッジをもらうと、即、柔らかいスナップスローで返球して、小園投手の軽快な投球テンポに勢いを加える。
ショートバウンドに対する横反応の敏捷性を見ても、大きな体を全くもて余していない。この捕手には、この体がちょうどよいのだろう。
なぜ「佐々木朗希の相手役」になれたのか?
翌春のセンバツ高校野球。県岐阜商の最初のプレーだ。