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フィギュアスケートPRESSBACK NUMBER
フィギュア界で脅かされる“女性の健康問題”…鈴木明子36歳が明かす過酷さ「無月経=ハードな練習ができている証拠でした」
posted2022/02/15 11:04
text by
小泉なつみNatsumi Koizumi
photograph by
Atsushi Hashimoto
選手の「低年齢化問題」をはじめ、多くの健康問題が指摘されている現代の女子フィギュア界を鈴木さんはどう見ているのか(全2回の2回目/#1から続く)。
女子選手には「成長」がネックになってしまう
――前編では、「低年齢化」というお話が出ました。平昌五輪で女子シングルの金メダルを獲得したアリーナ・ザギトワ選手は15歳でしたが、なぜ女子フィギュアでは「低年齢化」が進んでいるのでしょうか。
鈴木 昨今のジャンプ偏重傾向が年齢の問題と深く関わっています。
速くたくさん回転するには凹凸がなく、体の軸が細いほうが物理的に速く回れます。そのため、胸やお尻といった女性らしい曲線が出てくると、高難度のジャンプを跳ぶのが難しくなってくるんです。そういった意味で、高得点が得られる4回転に挑戦する場合、より若い方が有利になってくるわけです。
――そうして小さいうちにジャンプを習得したとしても、年齢や成長の「壁」が出てきてしまうということなんですね。
鈴木 ザギトワ選手が北京五輪に出られなかった理由も、女性としての成長が原因のひとつと言われています。次から次とより若い世代が出てきて高難度のジャンプを跳んでいく一方、自分は次第に身長が伸びてバランスが変化し、前と同じことをしていてもかつてのように跳べなくなる。そのバランスを探っているうちにまた下の世代が出てきて、納得できないまま競技生活を終わらせる選手も出てきてしまう。
逆に男子の場合、身長が伸び切って筋力がしっかりついてきた時の方がジャンプに有利になるので、女子の方が、「成長」がネックになりがちなんです。
期待していた選手が若くしてリンクを去ることも多い
――ジャンプばかりが注目されるようになると若年化を招きやすくなるだけでなく、フィギュアの多面的な魅力も薄れてしまいそうです。
鈴木 フィギュアスケートには、音楽と一体化した表現というアーティスティックな側面とスポーツ的な側面があって、選手ごとに魅力がまったく異なります。
もしザギトワ選手が数年後、これまでの経験を活かした表現をスケートで見せてくれたら女子フィギュア界に一石を投じるロールモデルになるだろうと思いますし、私自身いちファンとして、彼女の成長を本当に見てみたい。でも同じように「この先どんなスケーターになるだろう」と期待していた選手が若くしてリンクを去ってしまった例が山ほどあって。
――「成長」が理由で引退していくというのは残念ですよね。