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《日本選手団メダル第1号》「予選1本目からつらかった」堀島行真が驚異の挽回…「最低限」と語った銅メダルの“本当の価値”
posted2022/02/06 11:04
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Naoya Sanuki/JMPA
どこまでも晴れやかだった。表彰台で、笑顔がこぼれた。
「最低限、(目標に)掲げてきたところに届くことができて本当によかったなというのと、今、自分がいる場所を幸せに感じてのぼりました」
表彰台での心境を語るときも、その表情は晴れやかだった。
2月5日、フリースタイルスキー・男子モーグルで堀島行真は日本選手団第1号のメダルとなる銅メダルを獲得した。それは堀島にとって、「最低限、掲げてきた」におさまらない価値の込められたメダルだった。
予選1回目は「想定外」の16位も…徐々に本領発揮
今シーズン、ワールドカップ全戦で表彰台に上がり、五輪種目のモーグルに限れば7戦中3勝をあげている。金メダル有力とも言われ、堀島自身、世界一を視野に大会を迎えていた。
だが、2月3日に迎えた予選は思いがけない結果に終わった。10位以内に入れば決勝に進めるというレギュレーションのもと、74.40点で16位にとどまり、決勝を前に行なわれる予選2回目への出場を余儀なくされたのだ。
モーグルの決勝は3本実施され、2度の予選をそれぞれ通過した計20名が、最後は6名まで絞られて競う形式だ。つまり予選2回目に出るということは、メダルを目指す堀島にとって、同日に4本滑らなければいけなくなったことを意味していた。
それは堀島の計画にはなかった。
「予選1本滑り終わって10人の中に入ることができれば、あとは決勝3本というふうになります」
大会前の言葉からも、予選を一発で通る前提であることがうかがえた。
しかし堀島の滑りは冷静だった。予選1回目でスピードが出すぎた反省をいかし、2回目は落ち着いた滑りで決勝に進む。
ここから1本滑るごとにギアを入れ、決勝1回目は5位、決勝2回目で3位につけ、ついに決勝3回目を迎える。