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《日本選手団メダル第1号》「予選1本目からつらかった」堀島行真が驚異の挽回…「最低限」と語った銅メダルの“本当の価値”
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byNaoya Sanuki/JMPA
posted2022/02/06 11:04
男子モーグルの堀島行真は予選1回目の16位から見事に巻き返し、日本選手団に今大会初のメダルをもたらした
堀島は6人中4番目でスタートした。第1エアは持ち前の滞空時間の長い「フルツイスト」。着地後、やや乱れたが、そこから攻める。第2エアもしっかり決めてゴール。決勝1、2回目の25秒台から一気に23秒台へと上がったタイム(得点の20%を占める)からも、攻める姿勢が浮き彫りになっていた。81.48という高得点が表示され、この時点で1位。残りは2名、メダルが確定した瞬間だった。
ストイックさが裏目に出た平昌五輪
それは堀島が「殻」を打ち破ったメダルでもあった。
4年前の平昌五輪でも、前シーズンの世界選手権2冠などの活躍で有力なメダル候補にあげられていた。だが決勝2回目に転倒。11位で初めての五輪を終えることになった。
敗因は、大会へ向けての調整にあった。とことん強化を図り、心身ともに疲労を残していたのだ。周囲の誰もが真面目、練習熱心と語るほど、自分の滑りを磨こうと努め、そのための努力を重ねてきたのが堀島だ。日本代表の城勇太コーチは平昌五輪後、「人間なんだから体を酷使しないで休む時間を作ろう」とアドバイスしたことがあるという。そのエピソードも、ストイックに競技と向き合う堀島の性格を物語っている。
2度目の五輪では、同じ過ちを繰り返さないよう努めた。
「今シーズンが始まる前からコンセプトにしていたのは、『疲れない体』というか、そもそも練習量を減らすことで疲れない、というところを目標にしていました。4本、あるいは5本の滑りに力を出し切れるようにしています」
本番に向けて余力を残していたことが、予定していなかった予選2回目に回っても、最後まで滑り切れた要因だった。