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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「田中碧と守田英正のサイドを入れ替えたことが大きい」中村憲剛が完勝サウジ戦を徹底分析「南野拓実は心憎いほど落ち着いていた」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2022/02/04 17:04
サウジアラビア戦で最終予選初ゴールを決め、アシストの伊東純也と抱き合う南野拓実。左サイドでのプレーにも進境が見られた
サウジ選手の負傷交代が試合の分水嶺に
サイドを入れ替えた効果は、守備面でもある程度発揮されていたように思います。
サウジの攻撃は左サイドからがメインです。左SBの13番が上がって幅をとり、2列目左サイドハーフの10番が中へ入る。彼らもローリングを得意とし、積極的に日本の守備陣のズレを生み出そうとしてきました。
それに対して伊東が13番に引っ張られ、マークにつき過ぎる場面もあったので、守田がカバーを含めてフタをする形に切り替わりました。その判断は良かったと思います。サイドを入れ替えてから攻守で整理がつき始め、徐々に流れを持っていきつつあるところで、サウジの8番の選手(アブドゥレラ―・アルマルキ)が16分に負傷して23分に交代しました。
個人的には、ここがこの試合の分水嶺だったと思います。
彼はサウジのビルドアップのキーマンでした。最終ラインへ下りて数的優位を作ったり、攻撃が詰まるとうまく顔を出して逆サイドへ展開したり、チームの攻撃の矢印を出していました。味方にとってはありがたく、日本にとっては何とも厄介です。ビルドアップ時の彼の動きに日本はかなり手を焼いていましたし、自陣に押し下げられる原因になっていました。
彼の負傷退場はサウジにとって不運としか言いようがありませんし、この交代は試合に大きな影響を及ぼしました。代わって出場した7番の選手が攻守で機能する前に、日本はボールを握り返していき、相手の出方を冷静に見ることでボールを無駄に失わなくなり、その流れで先制することに成功したのです。
先制点は、現在のチームの一番のストロングポイント──伊東の突破から生まれました。あの場面でマッチアップした5番の選手は、開始早々に警告を受けていたので、強引な対応ができなかったのでしょう。伊東に追い抜かれる瞬間、手で引っかけようとしたように見えましたが、退場がチラついたのかもしれません。5番のCBとしての葛藤を尻目に、伊東は抜群のスピードで彼を抜き去りました。
そして、ゴール前を冷静に見極めてマイナスのグラウンダーパス。そのパスを待ち受けていたのは大迫勇也と南野でしたが、大迫は自分が打てるところを、相手と南野の立ち位置を冷静に見極めたうえでスルー。そして、ボールは南野のもとへ。
南野は心憎いほどの落ち着きでコントロールし、シュートは飛び出してきた相手GKの足に当たったものの、カバーしたDFが伸ばす足を擦り抜けてゴールに。「相手をしっかりと見極めたうえでプレーできる選手が多ければ多いほど、ゴールは決まる」というお手本のような素晴らしいゴールでした。
この南野の得点は、みんなが待っていたものだったと思います。チーム発足から慣れ親しんだ4-2-3-1のトップ下から、メンバーの入れ替わりなどの影響で4-2-3-1の左サイドハーフへ。そして、4-3-3のシステム変更に伴い左ウイングになり、同サイドの長友が厳しい指摘を受けていたなかで、彼も期するところがあったでしょう。