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29歳でGS最高成績へ…“狙い通りの遅咲き”ダニエル太郎がフェデラーに憧れる理由「必死でポイントを取りにいってる感じじゃない」
posted2022/01/25 11:01
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Mano Hiromasa
日本のテニス選手はいわゆる〈遅咲き〉のケースがたびたび見られる。過去には松岡修造さんがウィンブルドンでベスト8入りしたのは27歳のときだったし、現役選手ではたとえば現在33歳の杉田祐一は28歳でツアー初優勝を遂げた。
そして開催中の全豪オープンで、数日のうちに29歳の誕生日を迎えるダニエル太郎がグランドスラム自己最高となる3回戦進出を果たした。 現在120位のダニエルは予選からのスタートで、一つもセットを落とさず予選3試合を勝ち抜くと、本戦では同じ予選上がりのトマス・バリオス ベラをストレートセットで一蹴。2回戦では元王者アンディ・マリーをも6-4 6-4 6-4で破った。股関節の手術を経て復活途上にあるマリーのランキングはまだ113位だが、前哨戦のシドニーで準優勝し、3年ぶりの全豪オープンで期待も高まる元王者を相手にストレート勝ちとは驚いた。
日本人の遅咲き傾向の理由に関しては、欧米の選手に比べて身体の成長が遅いからだとか、天才型よりもコツコツ勤勉型が多いからだとか、言語や文化の面でツアーに馴染むのに時間がかかるからだとか、さまざまに言われるが、ダニエルの場合はまるでこのあたりの年齢での完成を狙っていたような計画性と心構えが見え隠れする。
2014年の全米オープンで予選を突破してグランドスラムデビューを果たしてから、グランドスラムの本戦はこれが18回目。2018年の5月にはツアー優勝も果たしたが、グランドスラムでは1回戦突破が過去4回あるだけだった。 20代後半で何か自己最高を成し遂げる選手は多くても、たとえば5年前と今とで、ダニエルほどプレーが目に見えて変化したケースは稀ではないだろうか。
ダニエル太郎「明らかに変わった」2つのポイント
まず目を見張るのがサービスの向上。20歳のトップ10プレーヤー、ヤニク・シナーに敗れた3回戦も含めて、本戦3試合で放ったサービスエースは合計31本だった。1試合平均10本ペースを年間通して維持できたとしたら、ツアーでも10位台に位置する数字だ。
要因は「練習量を増やしたこと」だとシンプルに答えたが、もちろん最近取り組み始めたわけではない。少なくとも2017年の終盤、神戸のチャレンジャー大会に出ていたときにこう言っていた。