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箱根駅伝、青学大・明大との“差”に苦しみ…中央大1年生キャプテンが泣いた“どん底の日”、名門が10年ぶり「シード権」で復活するまで
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byYuki Suenaga
posted2022/01/09 17:03
10区を走った中大主将・井上大輝(4年)。総合6位でゴールテープを切り、10年ぶりのシード権を獲得した
2017年に入学した畝拓夢は、その2016年に中大の夏合宿に参加した時の経験をこう語る。
「ポイント練習を走ったんですが……高校3年生の自分が2番だったんです。たしか、その時の4年生の人がトップで、『これ、ヤバいな』と思いました」
そして衝撃の日がやってくる。
2016年10月15日、中大は箱根駅伝予選会で敗退する。
その日のことを、私は原稿に書き留めている。
https://number.bunshun.jp/articles/-/826712
1年生キャプテンの舟津が、慟哭しながら大勢の大人の前で報告をしていた。
「11位という本当にあと一歩の順位で、本当に申し訳ありませんでした……外部から心ない声や、本当に今年は大丈夫なのかと、多くの声をいただきました。でも、自分たちはやれると思いながら、やってきました。それに対して、誰も文句は言えません。もし、先輩方に文句を言うような人がいたら、自分が受けて立ちます。自分にすべてぶつけてください。先輩に心ない声や、そんなことを言うような人がいたら、自分は許しません」
長年、箱根駅伝を見てきたが、これだけ酷な場面には遭遇したことがない。
本当に誰か、止めてあげてくれないか……と思いながらメモを取っていた。
振り返ってみれば、これが中大にとってどん底の日だった。
“箱根を走らない”中大を選んだ高校生たち
こうなると、有望な高校生は青学、明治、早稲田は検討しても、中央を選択肢から外してしまいがちになる。他校のエースクラスの選手たちから、「中大も考えましたけど、予選会校ですから……」という声も聞いた。
しかし、2016年に高校2年生だった世代が、今回のシード権復活に貢献するのだから、分からない。藤原監督は言う。
「高校2年といえば、進路決定においては重要な時期です。井上大輝(須磨学園)、手島駿(國學院久我山)、三浦拓朗(西脇工)、森凪也(福岡大大濠)といった選手たちは、箱根を走らない中央大学を選んでくれたんです。彼らには、感謝しても感謝しきれません」
2017年から中大の力は徐々に上向いていく。予選会では上位通過、が、本戦ではあと一歩の成績が続く。
2018年 15位
2019年 11位
2020年 12位
2021年 12位
そして、ラストピースを埋めた吉居大和
振り返ってみると、中大は2019年からシード権を獲得できる力はあったと見る。