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箱根駅伝、青学大・明大との“差”に苦しみ…中央大1年生キャプテンが泣いた“どん底の日”、名門が10年ぶり「シード権」で復活するまで
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byYuki Suenaga
posted2022/01/09 17:03
10区を走った中大主将・井上大輝(4年)。総合6位でゴールテープを切り、10年ぶりのシード権を獲得した
井上は3位でたすきを受けたが、駒大、東洋大、東京国際大と争いを繰り広げ、6位でフィニッシュ。それでも、大手町に帰ってきた時には満面の笑み。やり切った感じが伝わってきた。フィニッシュ後の井上の話がまた、爽やかだった。
「いやあ、抜かれちゃいましたけど、シード権取れて、本当に良かったです。今まで4年間、ハッキリ言って99パーセント苦しいことばかりでした。残りの1パーセント、最高の1パーセントが今日やってきました」
藤原監督も感激の面持ちだった。
「こんなに楽しい駅伝は初めてでした。正直、3位に色気は出ました。でも、アンカーは井上で良かったと思います。今年のチームは、井上のチームでしたから。どんな結果になっても、みんなが納得するアンカーでした」
「2024年に優勝を狙う」
2013年の棄権。
2016年の予選会敗退。
そして2022年の6位。
これでようやく、上を目指せると藤原監督はいう。
「これまでは、シード権獲得を前提に強化を組み立ててきました。これで来年は出雲、全日本、そして箱根と3本走ることが出来ますから、選手たちの経験値も上がっていくはずです。2024年の第100回大会では優勝を狙うという目標があるので、ここからまた第2のスタートという感じです」
これからまた、中大は強くなっていくはずだ。
4月からは吉居の弟で、5000mで13分台の記録を持つ吉居駿恭(仙台育英)をはじめ、有力な選手たちも入学してくる。
だが、未来に思いを馳せるよりも、井上の笑顔のゴールが今年の中大のすべてだ。
そして蛇足ながら、元日のニューイヤー駅伝の1区、区間賞を取ったのは「慟哭の報告」をした舟津彰馬だったことも付け加えておきたい。
選手も、組織も、苦しいことのあとには、いいことが待っている。
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