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《現役馬が急死》ワグネリアンの未来を奪った“内臓疾患”はなぜ競走馬にとって危険なのか?「ホースマンは常にリスクに向き合っている」
posted2022/01/07 17:03
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Keiji Ishikawa
2018年の日本ダービー優勝馬ワグネリアンが、今年1月5日の夕刻、栗東トレーニングセンター診療所の入院馬房で急死した。死因は、胆管に大きな胆石が詰まったことによる多臓器不全。まだ7歳という若さだった。
昨年11月28日のジャパンカップで18着に敗れたあと体調を崩し、年末から容体が悪化したという。ジャパンカップでは史上最多の4頭のダービー馬による競演を実現させた1頭として注目され、今後も競走馬として、そして引退後は種牡馬としての活躍も期待されていた。それだけに、関係者やファンが受けたショックと悲しみは大きかった。
ドゥラメンテ、ナリタブライアンも内臓疾患で死亡
現役の競走馬が、骨折などによる予後不良だけではなく、内臓の疾病などによって死亡するケースは、残念ながら、ときおり発生してしまう。
最近では、昨年6月20日の東京11レースのユニコーンステークスに出走したピンクカメハメハ(牡3歳)がレース中に、阪神12レースに出走予定だったウンダモシタン(牝4歳)が馬場入場後に急性心不全を発症し、そのまま息を引き取った。なお、馬齢は死亡時のものである(以下同)。
2019年の京阪杯に出走したファンタジスト(牡3歳)、14年にオーストラリアのメルボルンカップに参戦したアドマイヤラクティ(牡6歳)も急性心不全のため急死している。
ワグネリアンのような消化器系の疾病では、20年にドレッドノータス(せん7歳)、13年にマーベラスカイザー(牡5歳)、10年にタケミカヅチ(牡5歳)が放牧先で、14年にコディーノ(牡4歳)が美浦トレセンで疝痛(せんつう)を発症し、手術などさまざまなケアを施されたが、死亡している。「疝痛」と記したが、直接の死因は、腸捻転、出血性大腸炎などとなっている馬もいる。どの馬も、疝痛の症状が出たため、そう発表された。
ここには最近の重賞勝ち馬だけを記したのだが、消化器の疾患で命を落とす馬は意外と多い。現役引退後ではあったが、ドゥラメンテ(牡9歳)は昨年8月に急性大腸炎で、ナリタブライアン(牡8歳)は1998年に疝痛を発症したのち、胃破裂により世を去っている。