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《現役馬が急死》ワグネリアンの未来を奪った“内臓疾患”はなぜ競走馬にとって危険なのか?「ホースマンは常にリスクに向き合っている」 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byKeiji Ishikawa

posted2022/01/07 17:03

《現役馬が急死》ワグネリアンの未来を奪った“内臓疾患”はなぜ競走馬にとって危険なのか?「ホースマンは常にリスクに向き合っている」<Number Web> photograph by Keiji Ishikawa

福永祐一とともに、2018年の日本ダービーを制したワグネリアン

なぜサラブレッドは“内臓疾患”のリスクが高いのか?

 疝痛とは、『競走馬ハンドブック』(日本ウマ科学会)によると「腹痛のことであり、腸の炎症あるいは便秘、腸の痙攣、捻転、圧迫などによる閉塞によって生じるが、実際にはその原因が特定できない場合が多い。(略)発症の危険因子として飼料と飼養管理のほかに、寄生虫、性、齢、品種、既往暦、活動レベル、天候などが挙げられている」というもの。

 しばしば疝痛を起こす馬は珍しくない。エフフォーリアも、昨年の春先まではたびたび疝痛を起こしていたという。腹部を気にしたり、前ガキをしたり、寝たり起き上がったりを繰り返して落ち着きがなくなったりすることで発症がわかる。

 なぜ、馬は疝痛を起こしやすいのか。それは、馬の腸が30mほど(人間は7mほど)もあり、部位によって太さがまちまちで、複雑に入り組んで体内におさまっているからだと言われている。これほど腸が長く、体も大きいわりに、胃は小さく、消化器全体の10%程度の容量しかない。それゆえ、一度に多量の飼料を食べることには適していない。放牧地にいる馬がずっと脚元の草を食べているのは、少しずつ、長時間食べることに適した消化器を有しているからなのだ。

 なお、胆石は、肝臓でつくられ十二指腸に分泌される消化液の胆汁(たんじゅう)が、何らかの原因で固まってしまったものだ。

 馬は「不断食の動物」とも言われるほど、ゆっくりと栄養を摂ることが大切な生き物だけに、消化器系の疾患が命にかかわることも多くなる。ホースマンは、大きな負荷がかかるサラブレッドの脚元と、繊細な内臓の疾病のリスクに、つねに向き合っているのだ。

 だから、ワグネリアンのような事例が生じても仕方がない、などと言うつもりはもちろんない。しかし、サラブレッドという生き物の特性を知り、その疾病について納得できることが少しでも多くなれば、悲しい死を受け入れなければならない私たちの心を鎮める一助になるかもしれない。そう考えながら、本稿をしたためている。

【次ページ】 ワグネリアンは競馬ファンにとっても“特別な馬”だった

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