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<53歳に>武豊「最も乗りやすかったのは、断然オグリキャップです」では、“最も難しかった馬”とは? 第一人者が明かす本音の“騎乗論”

posted2022/03/15 06:00

 
<53歳に>武豊「最も乗りやすかったのは、断然オグリキャップです」では、“最も難しかった馬”とは? 第一人者が明かす本音の“騎乗論”<Number Web> photograph by Naohiro Kurashina

3月15日に53歳になった武豊。自らのJRA最多勝利記録を更新し続けている

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

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Naohiro Kurashina

2018年に前人未到のJRA通算4000勝を達成し、その記録を今も伸ばし続けている武豊騎手が、3月15日、53歳の誕生日を迎えました。今回は第一人者が惜しげもなく自らの「騎乗論」を明かした雑誌Numberの記事を特別にWeb公開します。
<初出:Sports Graphic Number 1027号(2021年5月20日発売)、肩書などすべて当時>

「それは面白そうですね。やりましょう!」

 今回の「騎乗論」というテーマを武豊騎手に投げかけたのは4月末のこと。3月20日の阪神競馬10レースでゲートを出る際に右足の甲を強打したことによる骨折からの復帰を目前に控えていた時期でありながら、意外なほどの二つ返事だった。そしてインタビュー当日。「久しぶりに上着を着て外に出ました。ほとんど家にいて、起きてから寝るまでジャージで過ごしていましたからね」と、全く違和感のない歩様と爽やかな笑顔でやって来てくれた。

――子供の頃にうまい、格好いいと思ったジョッキーはいましたか? やはりお父さん(武邦彦)でしたか?

「家では格好いいとか思わなかったですね。パッチ(股引き)穿いてゴロゴロしていて、オカンに怒られてばっかりでね(笑)。でもテレビの競馬中継で乗っている姿を観たら、やっぱり格好よかった。あと、福永洋一さんには憧れましたね。よく勝つし、格好よかったし。その後は田原成貴さん。うまいとかを超えて、格好よかった。小島太さんもそうでしたね。

 海外にもいました。クリス・マッキャロン(アメリカ、通算7141勝)、ゲイリー・スティーブンス(アメリカ、通算5187勝)、ホセ・サントス(チリ、通算4083勝)。なんか、雰囲気がいいんですよね。ハラリと馬に跨って、サラッと返し馬行って、シュッと走らせて勝つっていう、それがボクの好みなんでしょうね(笑)」

――ジョッキーの極意ってそこですか。昔、お父さんもそんなことをおっしゃっていましたよね。ドタバタするな、とにかく馬に迷惑かけるなって。

「言ってました、言ってました。ドタバタとかガチャガチャとか(笑)。そういう騎手になりたいな、ってそこは変わらずに思っています。馬の上でドタバタして親父に怒られたくない」

――'00年にアメリカ西海岸に拠点を移してアメリカンスタイルをみっちり体験されて、その後ヨーロッパでも('01~'02年、フランス)奮闘されました。それでも、騎乗フォームはどっちにもあまり影響されていないような気がするんですが。

「そうですね。どちらのどこがいい、何がいいっていうことではないと思うんです。日本でも、アメリカから(ケント・)デザーモが来て勝ちまくったり、ブラジル出身で香港で大活躍の(ジョアン・)モレイラが勝ちまくったこともありました。フランスから来た(クリストフ・)スミヨンもそうでしょう? 馬からしたら、何スタイルか知らんけど、この人に乗られたら走りやすいな、って思ってるはず(笑)。それがいい騎手なんです。でも現地に行ってみて、なんでみんなこんな乗り方してんのかな、と考えられたことが勉強でした。若いうちにアメリカとヨーロッパを体験できて本当に良かったと、そこは心底思っています」

【次ページ】 「現役生活は長くなかったんですが、あの人こそ天才です」

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