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フェラーリ、新幹線、大阪メトロ…凄腕“世界的デザイナー”は、なぜJ2山形の新エンブレムを「代表作」と呼ぶのか?
posted2021/12/25 11:02
text by
生島洋介Yosuke Ikushima
photograph by
J.LEAGUE
「いや、お金の問題じゃないんです。これは名誉なことですから」
2021年7月某日11時。山形と東京、そしてロサンゼルスをつないで行われた最初のオンライン・ミーティングで、予想外の言葉が発せられると、J2モンテディオ山形の鳥飼健司事業アドバイザーは思わず目を潤ませた。
現在のチーム名となって25年を機に、長年愛用したエンブレムの変更を検討してきた山形は、12月10日に地元出身の世界的デザイナー、奥山清行氏が手掛けた新デザインの発表を行った。
就任して3年の相田健太郎社長が「時代の変化に合わせ、モノとして使いやすくする必要がある」と考えてきたエンブレム。冒頭の言葉で動き出した“夢”のプロジェクトが形となった。
予算規模の格差は100分の1以上?
奥山清行/ケン・オクヤマと言えば、あのフェラーリをイタリア人以外で初めてデザインしたことで知られる人物だ。創業者の名を冠した記念モデルである『エンツォ・フェラーリ』やマセラティの『クアトロポルテ』を描いた。
独立後は「KEN OKUYAMA DESIGN」の代表として山形、東京、ロサンゼルスなどに拠点を構え、JR東日本の『E3系 山形新幹線』のエクステリアデザインや『E7/W7系 北陸新幹線』、山手線を走る『E235系』などの車両デザインを多数手がけてきた。新エンブレムの発表前日には、大阪メトロが2025年の万博に向けて導入する新型車両『400系』の宇宙船のようなデザインを発表したばかりだ。さらに取締役を務めているヤンマーでは、クルーザーやトラクターのデザインのみならず、会社全体のブランディングにも関わっている。
売上1兆円を目指す巨大企業の案件とモンテディオ山形のそれ、どちらもデザインやブランディングの仕事だが、予算規模の格差は100分の1ではきかないだろう。それだけに山形からの依頼も、完全なダメ元だった。鳥飼さんは明かす。
「やっぱり、頭から無理と決めてかかっていて、なかなか言い出しにくかったんです。でも、こんな機会でもなければ奥山さんに仕事のお願いなんてできない。まずは理想の相手から当たるべきじゃないかと」