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《天皇杯でジャイアントキリング》サッカー素人の“戦術ブロガー”がプロの分析官になれた理由「プレーが下手でも役割はある」 

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澤田将太

澤田将太Shota Sawada

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posted2021/12/21 17:02

《天皇杯でジャイアントキリング》サッカー素人の“戦術ブロガー”がプロの分析官になれた理由「プレーが下手でも役割はある」<Number Web> photograph by Sports X

ブログをきっかけに藤枝MYFCの分析官に抜擢された龍岡歩(現おこしやす京都AC)。9年間にわたる海外放浪の経験が分析官としての素地を作ったという

「プレーが下手でも、できることは間違いなくある」

 J3のなかでも決して裕福とはいえない藤枝MYFCだったが、選手人件費を勝ち点で割った“補強効率”において驚異的な数字を叩き出した。2016年にはJ3で7位に入り、優勝した大分トリニータをはじめ同リーグの全クラブを上回る効率で勝ち点を稼いでいる。結果を残した龍岡は、あえて関西1部リーグのおこしやす京都ACに活躍の舞台を移した。

「単純にJクラブへとチームを押し上げるプロジェクトに魅力を感じました。しかし、カテゴリーが変わればサッカーは変わります。藤枝で用いていた戦術が通用せず、開幕から連敗してしまったんです。ふたつカテゴリーが変わるだけで有効な戦術は全然違いました。技術レベルの問題もありますが、一番は環境の違いですね。たとえば、試合会場のピッチがボコボコに荒れているときはパスサッカーはできないわけですよ。試合日程も厳しく、地域CLを勝ち抜いて昇格するためには、リーグ戦はもちろん一発勝負のトーナメントにも強いクラブを作らないといけない。もっともっと適応していかないと、昇格は狙えません」

 環境による戦術の変化は、まさに龍岡が海外で学んだことだ。選手とは異なるキャリアと経験が、分析官である龍岡の武器となっている。プレーすることで得られるアドバンテージが大きいことは間違いないが、未経験の人間にも価値が生まれた。果たしてこの先、日本でも龍岡のような人材は増えていくのだろうか?

「完全な未経験ではありませんが、ヨーロッパではノンプロの選手から一流の監督になった人がたくさんいます。自分のようにブログがきっかけでコーチになった人もいて、その間口は確実に広がっている。サッカークラブの仕事は多岐にわたるので、プレーが下手な人でもできることは間違いなくあります。日本サッカーは世界のトレンドから20年遅れていると言われていますが、いずれはそういう時代がくると思います」

 本人も認めるように、龍岡のようなケースはレア中のレアだろう。サッカー未経験とはいえ、藤枝MYFCに入る前の龍岡の経歴は、簡単には真似できない尖ったものだ。しかしそれでも、龍岡は“素人のサッカー界への流入”に可能性を感じている。今後、誰も予想しないような形で、世界の舞台で活躍する“素人”が現れるかもしれない。<前編から続く>

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「10回やったら3回は勝てる」5部のクラブが天皇杯でJ1広島に快勝…サッカー未経験の分析官が語る“おこしやすの奇跡”の裏側

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