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フィギュア中継で“最も難しいこと”は? 人気解説者・鈴木明子が明かす本音「喋りすぎはNG」「“表現”の解説が少ない理由は…」 

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鈴木明子

鈴木明子Akiko Suzuki

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2021/12/23 06:00

フィギュア中継で“最も難しいこと”は? 人気解説者・鈴木明子が明かす本音「喋りすぎはNG」「“表現”の解説が少ない理由は…」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

2014年に現役を引退後は、テレビでの解説なども行っている鈴木明子さん

「ジャッジの判定と必ずしも合わない」という難しさ

 採点が難しい競技だからこそ、解説をするうえで大切にしていることもあります。ジャンプを例に取ってみると、選手が転倒してしまったら見ている人も“失敗した”と分かりますよね。一方成功した場合を考えてみると、同じジャンプを成功したのに点数が違う、つまりGOE(出来栄え点)での加点に差が出る、ということがあるわけです。ただ「成功」というだけではなくて、その技のどこがよく、なぜ加点が付くのかというところに解説者からの補足があれば、見ている人にとっても伝わりやすいのではないかと思っています。

 もう一つ、フィギュアスケートの採点には、先述のような「技術点」に加えて、「演技構成点」という観点もあります。これは演技の“表現”に関わる部分とも言えます。だからこそ、私が素晴らしいと思ったとしても、それが必ずしもジャッジの判定と合っているわけではないんです。だから解説をすることがとても難しくて、フィギュアスケートの解説が技術的なところばかりに寄ってしまう一つの要因になっているのかもしれません。私の場合は演技終了後のスローVTRの際に、表現の良かったところやポイントだと感じた部分を伝えるようにしていますが、やはり話しながら難しさを感じているのは事実です。

“どんな曲を使うか”にも選手の思いがある

 しかし一方で、解説者だから伝えられることがあるとも感じています。選手はプログラムを1シーズン、2シーズン通して仕上げてきます。その中で、演技構成点の部分に関してどういうところが前回の試合よりも良くなったのかなど、あくまで私の主観にはなるんですけど、なるべく伝えていきたいという思いがあります。

 私は2013-14年に、「現役最後のシーズンで使うプログラムは、誰でも知っている曲で滑りたい」という思いから、SPで『愛の讃歌』、フリーでは『オペラ座の怪人』の楽曲を使用しました。その時の私のコメントは、テレビ中継でも情報として実況の方がお話しされていたかもしれません。もしそういった思いが、その選手のシーズンのポイントになってくるのであれば、中継のなかで紹介することで見ている人にも選手の意図しているところが伝わり、分かりやすい解説になるのではないかと思っています。

フィギュア中継に“解説”は必要か、不要か?

 ただ、感じ方は人それぞれで、そのような追加の情報を「そうなのか」と受け取る方もいれば、「リンク上で起きていること以上のことは要らない」と感じる方もいるはずです。フィギュアスケートの解説では、「伝える」ということの難しさを改めて実感します。そこがとにかく難しいですね。演技に集中して見たい方は、中継の会場音だけを聞く方法もあるので、自分で選択してもらえればいいと思っています。私自身としては、せっかく解説ありの中継を見ていただくのであれば、選手がどのような思いでプログラムを滑っているのか、というところをできるだけ丁寧に汲み取り、伝えていけたらいいですね。

【次ページ】 今の“技術重視”は「ある意味で正しいこと」だが…

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