- #1
- #2
競馬PRESSBACK NUMBER
武豊“ユタカスマイル”が消えた…失意の凱旋門賞、薬物疑惑からディープインパクトはどう甦ったのか?
text by
小川隆行Takayuki Ogawa
photograph byフォトチェスナット
posted2021/12/24 17:00
ラストランとなった2006年の有馬記念。2着との差は広がるばかりで、まさに「飛んで」いた
しかし、ディープインパクトの能力は、そんなアヤなど寄せ付けない、はるかに高い位置にあった。続くジャパンCで海外GⅠ・7勝のウィジャボードに2馬身半差をつけての楽勝。
競馬場に響いたのは“女性ファンの「負けるな~」”
ラストランの有馬記念を迎えた。前年より5万人ほど入場者数が減ったものの、当日の中山競馬場は、足の踏み場もないほど大勢のファンが押しかけ、場内は熱気を帯びていた。
私が初めて有馬記念の中山競馬場に足を運んだ際は男性ファンが9割近かったが、この年は女性ファンが半数近かった印象がある。それも若い女の子ばかりだ。
ゲートイン直前、場内のあちこちから「ディープ~!」の声が響いた。その熱意に気圧されたのか、いつも以上にゲートインで後ずさりしたスイープトウショウが出遅れた。
後方3番手を進むディープインパクトはいつもと同じ脚色で1コーナーを迎える。ハナに立ったアドマイヤメインが後続を8馬身近く離して逃げるも、3コーナー手前で進出を開始したディープが4コーナーで先頭に並びかけた。武豊がムチを入れると後続を瞬く間に突き離す。「これが最後の衝撃だ!」という実況が流れたとき、場内のあちこちから黄色い「ディープ~」という声が沸き起こった。数年前の馬券オヤジの「差せ!」「そのまま!」という怒声ではなく、女性ファンの「負けるな~」という声援である。
ディープインパクトが教えてくれたこと
レース後に行われた引退式を終えて中山競馬場を去るとき、私は心の中でつぶやいた。「ありがとうディープ」。それは、馬券オヤジの競馬雑誌編集者である私に「競馬のすばらしさと難しさ」を教えてくれた感謝の意だった。
◆◆◆