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1000万DL超『ウマ娘』はサイレンススズカ“悲劇の天皇賞・秋”をどう描いたか? 今だからこそ実現した「夢のような結末」とは

posted2021/10/29 17:03

 
1000万DL超『ウマ娘』はサイレンススズカ“悲劇の天皇賞・秋”をどう描いたか? 今だからこそ実現した「夢のような結末」とは<Number Web> photograph by ©Cygames, Inc.、Keiji Ishikawa

(左)『ウマ娘』に登場するサイレンススズカ、(右)毎日王冠でのサイレンススズカと武豊

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屋城敦

屋城敦Atsushi Yashiro

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©Cygames, Inc.、Keiji Ishikawa

 府中の盾には、ドラマチックなストーリーが詰まっている。

 もともと春と同じ芝3200メートルのレースだった天皇賞・秋は、1984年からは距離を芝2000メートルに短縮。以来、13番人気の“伏兵”ギャロップダイナが“皇帝”シンボリルドルフを下し世間を驚かせた1985年、メジロマックイーンが1位入線もまさかの最下位降着となった1991年、ウオッカがダイワスカーレットをわずか2cmの差で制した2008年など、毎年のように劇的な戦いが繰り広げられファンを魅了してきた。

 そして今、それらの熱いドラマを語り合う層が急速に拡大しているという。その立役者が、ゲームやアニメ、コミックなどさまざまなメディアで展開され人気を博しているコンテンツ『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、『ウマ娘』)だ。かつての名馬たちを美少女化した“ウマ娘”たちの物語が展開するこのコンテンツでは、モデルとなった馬のルックスや性格、経歴はもちろん、血統、関係者も含めたさまざまなエピソードを、実に細かくキャラクターの設定やストーリーに盛り込んでいる。

 牡馬、牝馬問わず競走馬を美少女化していたり、学園を舞台にした“スポ根”系のストーリーにアレンジされていることで面食らう競馬ファンも多いようだが、競馬を知らない層にはむしろそれで親しみやすいものになっており、『ウマ娘』をきっかけに競馬にハマるようになった人も多いと聞く。特に2021年に配信開始され、日本国内だけで1000万ダウンロードを突破したというゲーム版の影響力は大きいようだ。

サイレンススズカは『ウマ娘』を代表するキャラ

 天皇賞・秋の歴史を語る上で欠かせない存在でもあるサイレンススズカは、2018年に放送されたテレビアニメSeason1でスペシャルウィークとともに主人公のひとりとして登場するなど、『ウマ娘』を代表するキャラクター。素直で寂しがり屋だったというエピソードからか、性格はおとなしく優等生的、体格は史実でも430~450kg前後だったように細身である。

 また、キャラクターデザインを眺めてみると、緑の耳カバーは史実馬のトレードマークだった緑のメンコがモチーフで、レース時に着替える勝負服では緑地の袖などに黄色の線が入っており、それも馬主の永井啓弍氏が実際に使用していた勝負服のカラーリングそのものと、こだわり抜かれた設定が外見からも見て取れる。さらに細かいところでは、狭いところでも高速で左回りにクルクル回り続けるという、有名だった“旋回癖”も作中で披露されていて、競馬“通”を唸らせている。

【次ページ】 サイレンススズカ最後の天皇賞・秋はどう描かれたのか?

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