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競馬PRESSBACK NUMBER
武豊“ユタカスマイル”が消えた…失意の凱旋門賞、薬物疑惑からディープインパクトはどう甦ったのか?
text by
小川隆行Takayuki Ogawa
photograph byフォトチェスナット
posted2021/12/24 17:00
ラストランとなった2006年の有馬記念。2着との差は広がるばかりで、まさに「飛んで」いた
「今回ぼくは凱旋門賞に挑戦するのではなく、凱旋門賞に騎乗するんです(中略)。ディープが凱旋門賞に出るのは、そんなにすごいことじゃないですから。ここまで強くなって、あれだけブッちぎって勝ちまくったら、当然、次はもっと大きな舞台へ…となるじゃないですか。こんな馬、日本にいなかったでしょう。もしかしたら世界にもいなかったのかもしれない」(『ありがとう、ディープインパクト』島田明宏著・廣済堂出版刊より)
普段の年と異なり少頭数(9頭立て)となったのは、他馬が勝てないと感じたからかもしれない。事実、フランスギャロの最終オッズは1.5倍だった。
レース後、時間が経過すると、武豊は「いつもの走りではなかった」と語った。ディープインパクトでさえ勝てない。日本のファンは改めて凱旋門賞という壁の高さを感じた。
引退レース直前「禁止薬物」が検出
レースから10日後、ディープインパクト引退のニュースが流れた。ジャパンCと有馬記念の2戦で有終の美を飾るという内容は、私を含む多くの競馬マスコミが予想した通りだった。
さらに8日後。予想だにしないショッキングなニュースが流れてきた。ディープインパクトの体内から禁止薬物が検出されたというのだ。
調教師の池江泰郎は「9月に咳込んだ際、フランス人獣医師の処方によりイプラトロピウム(禁止薬物)による吸入治療をした」と弁明書に記した。「吸入中に暴れた直後、付着した干し草をレース前にディープが食べたのでは」という内容だった。イプラトロピウムが競走能力を高めるとは認められておらず、「不注意による投与ミス」となった。
ここからは私見だが、ディープ陣営は決して悪意のある不正などしていない。簡単な話、そんなことをせずとも勝てる見込みが十分にあったからだ。
薬物問題とは別に(個人的に)ディープインパクトには二つの「嫌な感じ」を持った。一つは凱旋門賞の疲労。もう一つは、世界最強とみていたディープについたアヤである。
目に見えない何かがディープにまとわりつき、レース中にアクシデントでも起こるのではないか。