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気鋭の新監督ナーゲルスマンの下で10連覇へと突き進む盟主バイエルン 「完璧な4カ月」を過ごすも超攻撃的布陣に潜む一抹の不安
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/11/20 17:01
今季よりバイエルンの指揮を執るナーゲルスマン。34歳の若き知将はいかなる手腕でビッグクラブを10連覇へと導くのか
直近のリーグ4試合で6得点、CLの4試合で8得点を奪うなど相変わらず好調に見えるレバンドフスキの苦言も少し気がかりだ。
「ここ最近シュートチャンスを得たり、ピッチ上で僕がいるべきポジションを見つけたりするのが難しかった。攻撃的選手が6人も一緒にピッチに立って、相手が非常に守備的に対応してきたら簡単なことではない。遅かれ早かれチャンスを作り出しているけど、僕にとっては簡単ではない。辛抱が重要なのは分かっているけど……」
順調に見えるも修正点は少なくない
世界屈指のストライカーであるレバンドフスキは誰よりも頼りになる存在であるため、どんな状況でもボールが集まりがちだ。彼への依存度の高さはマイナス要因でもあるので、攻撃のバリエーションが増えること自体はいいことのはず。
しかし、そのためにレバンドフスキがボールに関われる頻度が減って、プレーリズムに乱れが出てしまったら、チームにとってはマイナスになってしまう。
ナーゲルスマンも、そのあたりを憂慮しており、前述のベンフィカ戦後にはレバンドフスキのプレーについてコメントを残している。
「レビィは最初の25分間は相当不満を抱えていた。ボールコンタクトが少なかったから。でも、そこから彼は次々にボールを要求して、何度もパスを引き出してくれた。彼の持つメンタリティの賜物だ。常にゴールを狙っているレビィにプレーの喜びが見てとれるのは大事なことだ」
チームを率いて半年も経っていない。予想より順調に見えるバイエルンだが、修正点は少なくない。ホッフェンハイム時代のナーゲルスマンの言葉を思い出す。
「誤解してほしくないのだが、システムや選手の配置を変えることはあっても、プレーの原則を変えたりはしていない。選手が原則さえ理解してくれたら、最初の立ち位置が違うというだけで、やるべきこと自体に大きな変化はない。選手の理解度と解釈力と、こちらの期待値のバランスをしっかり取らなければいけないと思う」
盟主バイエルンを率いるナーゲルスマンと選手のイメージは重なり合ってきているが、成熟はまだまだこれからだ。