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「もう終わった」と思われていたレロイ・サネが完全復活へ 2人の指揮官は天才をどのように蘇らせたのか?
posted2021/11/01 17:00
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
最近のドイツにおいて注目と期待を集めているのが、バイエルンのドイツ代表FWレロイ・サネだ。代表に限らず、バイエルンでの活躍は特筆に値する。
本来なら、今年のEURO2020で世代交代を象徴するドイツ代表の旗頭となるはずだった。昨年7月にマンチェスター・シティからバイエルンへ6000万ユーロで移籍。ただ移籍前に負っていた十字靱帯断裂の影響もあり、納得のいくパフォーマンスを出せず、時間だけが過ぎていった。
EURO2020で代表のレギュラー落ち
それでも代表を率いるレーブ監督(当時)はサネへの信頼を崩そうとはしなかったが、EURO前にスペインに0-6、W杯予選で北マケドニア戦を1-2で落とすなど、歴史的な敗戦が続いてしまった。
危機感が極限まで高まったレーブ監督がEUROで3バックを採用するなど戦い方を変更したこともあって、サネはレギュラーポジションを失った。グループリーグ3戦目のハンガリー戦こそ先発フル出場したものの、目立った活躍はできなかった。
鬱憤を晴らす活躍を期して今季のブンデスリーガを迎えたが、イメージ通りにいかない。第2節ケルン戦ではすべてがうまくいかず、途中交代がアナウンスされた際はバイエルンファンから皮肉な拍手さえ起った。地元メディアの中には「サネはもう終わった」という論調を展開するところも少なくなかった。
そんなサネにとって、心の支えとなったのがドイツ代表のハンス・フリック新監督とバイエルンのユリアン・ナーゲルスマン新監督だった。
ナーゲルスマンはすぐサポートを明言し、その第一手としてシティ時代に輝いていた左サイドのオフェンシブな位置で起用するようにした。
左サイドでのプレーが復調への道に
右サイドでプレーしていた頃のサネは、アリエン・ロッベンの後継者として期待される重荷があったのだろう。同じ左利きでドリブルが得意ということで、ロッベンのように右サイドで相手守備陣を切り裂き、カットインからの左足シュートでチームに勝利をもたらしてくれるというイメージで見られてしまっていた。
ただ、サネとロッベンは違う。
似たような特徴を持った選手ではあるが、似たようなプレーが得意というわけではない。シティ時代にサネが披露していた持ち味のひとつは、ナーゲルスマンも指摘したように、相手守備の裏を取る動き出しの巧みさだ。