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鈴木誠也の大リーグ挑戦は「いいタイミングではない」が…MLB経営者側と選手組合の衝突激化で〈大谷翔平の年俸問題〉にも影響?
posted2021/11/16 17:05
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
JIJI PRESS
広島東洋カープの鈴木誠也外野手が、ポスティング制度を行使してメジャーリーグ(MLB)に挑戦するという報道が大リーグ公式サイトで先走って報道されたのは11月5日のことだった。
それから11日が経ち、今年のオフは日本プロ野球(NPB)からメジャーリーグ(MLB)に移籍するには、「あまりいいタイミングではない」という思いがどんどん、強くなっている。
今季のポスティングが「いいタイミングではない」理由
それは今から約2週間後の12月1日に、現行の労使協定(Collective Bargaining Agreement=CBA)が期限を迎えるためだ。
期限までにMLBの経営者側と選手組合が合意に達せず、新しいCBAの締結に至らなければ、MLBが(少なくとも表面上は)Work Stoppage=活動停止になってしまう。そうなれば、まず何よりも菊池雄星投手や筒香嘉智選手のようなMLBのフリーエージェント(FA)、次に年俸調停権を取得している単年契約の選手との契約更改が滞る。ポスティング申請の期限は現行の労使協定期限切れ後の同月5日なので、影響を受けるのは必至だ。
1994年のシーズン終盤から1995年の春まで続いたMLB最後の活動停止以来、経営者側によるロックアウトも、選手組合によるストライキも行われていないにも関わらず、米報道陣の多くは新しいCBAの交渉経過を、いささか悲観的に見守っている。
彼らが経営者側のロックアウトが起こる可能性が高いとする理由は、高騰し続ける「選手の年俸総額の抑制」を狙う経営者側と、「メジャー歴の短い選手たちの待遇改善」と「全球団の競争力向上」を目指す選手組合の考えが、根本的に相反するからだ(著者注:すでにシーズンが終了しているので、選手組合にはストライキをする利点がない)。
経営者側から提案された大胆な改革案
幾つかの報道を統合すると、オフになって経営者側から選手組合に提案された新しい労使協定には、
(1)現行はメジャー歴6年で取得できるFA権を、メジャー歴ではなく29歳半と年齢制に変更する。
(2)現行ではメジャー歴3年以下で取得できる年俸調停権の代わりに、FA権取得前の選手たちの年俸をメジャー歴とセイバーメトリクス(野球の統計分析)の代表的な数値であるWins Above Replacement(WAR)を導入した算出法で設定する
という大胆な改革案が含まれていたという。