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Jをめぐる冒険BACK NUMBER
怒涛の11連勝で大逆転優勝「クリアソン新宿」の正体とは? 難敵を次々と味方につける“週刊少年ジャンプ”のような快進撃
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![飯尾篤史](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/f/9/-/img_f95ef5c9e8e76422322a429d92cc938d209844.jpg)
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byKiichi Matsumoto
posted2021/11/11 11:02
![怒涛の11連勝で大逆転優勝「クリアソン新宿」の正体とは? 難敵を次々と味方につける“週刊少年ジャンプ”のような快進撃<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/7/2/700/img_72b67f762fde23c1930eb38fbf9cd615151952.jpg)
クリアソン新宿の運営会社である株式会社Criacaoの丸山和大代表。自身もサッカーに明け暮れた学生時代を過ごした
「神田隆弘会長にお会いしたら、僕らの理念にすごく共感してくださって。僕らがやっている地域活動もすごく評価してくださった。一緒に一つひとつ口説いて回るから、2、3年計画でまず1年目は汗をかけと。いろんなところで汗をかいたら、きっと周りが応援してくれるからって」
神田会長のもとで1年目に新宿区サッカー協会の常任理事を務めた丸山は2年目に常務理事、3年目からは副会長となる。
その間、クリアソン新宿は地域活動の実績を積み上げ、新宿区サッカー協会との関係性を強固なものにしていった。今では30人ほどいる常任理事はみんな、クリアソン新宿の強力な支援者になっている。
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東京商工会議所の新宿支部とは、ひょんなことから繋がった。
「株式会社Criacaoの事業のひとつにブラインドサッカーによる研修プログラムがあるんですけど、それを東京商工会議所の青年部向けに実施したところ、のちの新宿支部青年部の幹事長の方が、『これ、すごく面白いね』と言ってくださって」
その人物は『カステラ一番、電話は二番、三時のおやつは文明堂~♪』のCMソングで知られる文明堂東京の宮崎進司社長だった。
「宮崎さんはもともとサッカーに興味はないんです。ただ、地域のためにサッカーというスポーツを活用するという、クリアソンが目指す街づくりの筋を認めてくださって。まずは青年部の仲間50人を巻き込んで、次は区も巻き込んで、どんどんやっていこうと、いろいろな方を紹介してくださって」
こうして宮崎社長の紹介で、東京商工会議所新宿支部の会長を務める、タカノフルーツパーラーの高野吉太郎社長のもとを訪ねると……。
「高野さんも、もともとサッカーに興味のない方で(苦笑)。『サッカーで地域問題を解決すると言うけれど、新宿はサッカーがなくても困ってないんだ』と。『おっしゃる通りですよね、ただサッカーがあると、より良くなるんじゃないですか』という話をしたんですけど、そのときはけんもほろろで(笑)。でも、『また語らせてください』『また来ます』と続けているうちに、どうやらこいつらは、強いサッカーチームを作りたいという話をしているのではない。本気で街づくりの話をしているんだな、と高野さんも気づいてくださって」
新宿区サッカー協会、東京商工会議所新宿支部の理解を得た丸山とクリアソン新宿は、いよいよ吉住健一新宿区長にアプローチを開始……と輪を広げていくうちに、新宿の街は未曾有の危機に見舞われた。
新型コロナウイルスの感染拡大である。
緊急事態宣言やまん延防止等重点措置によって時短営業や酒類の提供停止を余儀なくされ、日本一と言える繁華街は大打撃を受けた。
だが、コロナ禍はクリアソン新宿にとって追い風でもあった。
みんなが明るい話題を探していた
「新宿の街が危機を迎え、何か明るい話題はないのかとなったときに、クリアソン新宿の存在をクローズアップしていただいて、みんなで盛り上げようと。商店会連合会や新宿区体育協会なども後押ししてくださった。僕らも何か力になりたいということで、飲食店向けのクラウドファンディングをしたり、中高生にオンラインの練習メニューを提供したりするうちに、サッカーってこんな使い方があるんだ、スポーツで本当に地域が元気になっていくんだという評価をいただけて」
2020年11月には、新宿区との包括連携協定が結ばれた。
この協定は、地域が抱える課題に対して、自治体と民間企業が協力して解決を目指すものだ。
サッカーで街を盛り上げ、問題解決に取り組もうとするクリアソン新宿の試みを、新宿区が歓迎しているという証だった。
もともと野球好きだった吉住新宿区長も、今ではすっかりクリアソン新宿のファンになっている。
次々と現れる難敵を味方につけていく様子は、まるで『週刊少年ジャンプ』の漫画のようなストーリーだ。
「でも、順調そうに聞こえるかもしれませんが、大変でした(笑)。ただ、たまたまなんですけど、サッカー好きじゃない人から口説くことになったのが良かったかもしれないですね。多くのクラブはサッカー好きから巻き込んでいき、最後にサッカー好きじゃない人を口説こうとするから難しい。『あなたたち、サッカー好きの集まりでしょ』となってしまう。でも僕らの場合は、『サッカー好きじゃない高野さんや宮崎さんが言うなら』となったんです(笑)」
そして、のちにクリアソン新宿の歴史を振り返ったとき、大きなターニングポイントとなる2021年シーズンを迎えることになる。
(後編へ続く)
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。
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