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Jをめぐる冒険BACK NUMBER
怒涛の11連勝で大逆転優勝「クリアソン新宿」の正体とは? 難敵を次々と味方につける“週刊少年ジャンプ”のような快進撃
posted2021/11/11 11:02
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Kiichi Matsumoto
この夏から秋にかけて、関東サッカーリーグ1部(J1から数えてJ5に相当)ではちょっとした奇跡が起きようとしていた。
リーグ在籍2年目のクリアソン新宿が破竹の10連勝を飾り、リーグ初優勝と、JFL昇格につながる全国地域サッカーチャンピオンズリーグ出場にリーチを懸けたのだ。
クリアソン新宿には、井筒陸也(元徳島ヴォルティス)、小林祐三(元横浜F・マリノスなど)、岡本達也(元ジュビロ磐田など)、瀬川和樹(元栃木SCなど)といった元Jリーガーが所属しているが、プロ契約選手はいない。
チームは社会人選手と学生で構成され、元Jリーガーも昼間は社業に励んでいる。
さらに専用の練習場もなければ、ホームスタジアムもない。
関東リーグ1部にはほかに、都並敏史監督率いるブリオベッカ浦安、岡山一成監督率いるVONDS市原、前年王者で専用スタジアムを持つ栃木シティFCなど強豪チームが在籍し、「地獄の関東リーグ」と呼ばれるほど実力が伯仲している。
むろん、これらのチームも元Jリーガーを多数抱えている。
つまり、クリアソン新宿は戦力面や環境面で、突き抜けた存在ではないのだ。
それなのに、夏を迎えた頃に5位だったクリアソン新宿は、ここから一気にギアを上げ、劇的なゲームを積み重ねながら連勝街道を突き進んでいく。
「僕らは世界一を目指しています」
迎えた10月10日の最終戦の相手は、リーグ最下位に沈む流通経済大学FC。クリアソン新宿のホームゲームでありながら、流通経済大のグラウンドで開催されたこの試合でも、クリアソン新宿は次々とゴールを叩き込んでいった。
11連勝と大逆転優勝に近づきつつある彼らを見ていて思い出したのは、チームの代表であり、運営会社の株式会社Criacao(クリアソン)の代表でもある丸山和大の言葉だった。
「僕らは世界一を目指しています。このクラブの理念を突き詰めること自体が、サッカーで勝てる戦略につながっていると思っていて。僕らの信じていることを続けていけば、勝利に最も近づける。心からそう思っているので……」
ゴールラッシュを眺めながら、“勝てる戦略”の意味を噛み締めた。