野球クロスロードBACK NUMBER
開幕前は楽天“第6の男”→2桁勝利&CS進出に貢献⋯「ポジティブではない」2年目右腕・瀧中瞭太(27)、その真骨頂とは
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2021/11/02 06:00
CS進出がかかった大一番で10勝目を挙げた楽天2年目右腕・瀧中瞭太
ポジティブではないが悲観はしない。瀧中が相反する感情を同居させられるのは、この精神が根付いているからかもしれない。
エリートでも、若手でもない右腕の真骨頂
粘り。
及第点のマウンド後に彼は、必ずと言っていいほどこの言葉を使う。
瀧中の潜在意識のなかでは、ミクロの領域で「ポジティブではない自分」と向き合っている。そのことで、より1球に対するこだわりを生み、やがては粘りのピッチングへと繋がっていくのではないだろうか。
今季は二軍落ちを経験しながらシーズンのほとんどでローテーションを担い、大台の10勝に到達した。一方でマウンドに立っていたのは103回2/3と、規定投球回数には遠く及ばなかった。
自身が掲げていた「7回以上」のマウンドを果たせたのは3回しかなく、「6回3失点」以上のクオリティスタートも8回(40%)にとどまった。確かに優れた数字ではない。しかし、短いイニングのなかでも防御率3.21と安定感を示せたのは、瀧中が粘りのピッチングをし続けた何よりの証左でもあった。
大学・社会人出身のドラフト6位。決してエリートではない。今年で27歳。2年目でも若手に分類される年齢ではない。
ポジティブではない男は、常に足元を見る。時にネガティブなほど不甲斐ない自分と対峙し、糧にしようと努める。
粘り、我慢、しぶとさ。チームに勝利をもたらすために、マウンド上で食い下がる。
それが、瀧中瞭太というピッチャーだ。