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《ドラ1同級生、2年目の覚醒》佐々木朗希・奥川恭伸・宮城大弥は高3の夏、笑顔の戦友だった… 新世代エースの意外と知らない“こぼれ話” 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2021/10/18 11:02

《ドラ1同級生、2年目の覚醒》佐々木朗希・奥川恭伸・宮城大弥は高3の夏、笑顔の戦友だった… 新世代エースの意外と知らない“こぼれ話”<Number Web> photograph by Kyodo News

2019年U-18日本代表での奥川恭伸、宮城大弥、佐々木朗希。2年後の今、日本球界を支えるエースになる予感を漂わせている

 奥川も1年目はシーズン最終戦に先発して2イニングを投げただけだった。2年目の今春、浦添キャンプのブルペンでは、臨時コーチになっていた古田敦也氏が相手をした。コロナ禍で移動が制限された取材陣が群がっていたが、奥川は古田臨時コーチの構えたミットに精度の高いボールを投げ込んだ。

山本由伸に次ぐ宮城、奥川・佐々木のスゴい成績は?

 今シーズンのオリックスの躍進は、打の杉本裕太郎、投の宮城大弥の急成長によるところが大きい。宮城はオールスター戦まで9勝1敗と圧倒的な成績を残し、山本由伸と並ぶ左右のエースになった。後半戦はやや打ち込まれたが、12勝4敗、防御率2.55(以下、成績はすべて10月17日時点)。勝ち星、防御率ともにチームの先輩・山本由伸に次ぐ2位だ。

 奥川恭伸も開幕3戦目に先発したものの、前半戦は4勝2敗、防御率4.19。宮城に比べると今ひとつの成績だった。しかし6月後半から安定感が増し、6月20日以降9試合連続QS(先発で6回以上投げて自責点3以下、先発の最低限の責任)をマーク。通算では9勝3敗、防御率3.02となっている。

 注目すべきはK/BB(奪三振数÷与四球数)だ。奥川は83奪三振、与四球はわずかに9。K/BBは9.22。これはセ・リーグで80イニング以上投げた26投手の中でダントツの1位。2位のDeNA今永昇太は4.57だからそのすごさが分かる。秋になってから阪神の中野拓夢、佐藤輝明、広島の栗林良吏の争いと言われた新人王レースに割って入った形だ。

 佐々木朗希は、今季初めて二軍戦に登板。5試合1勝0敗、防御率0.45という好成績を挙げて5月16日の西武戦で一軍デビュー。以後、2週間前後と長い登板間隔で投げたが、3勝2敗57.1回、防御率2.51をマーク。大物投手の片鱗を見せつつある。

 迎えた10月14日のオリックス-ロッテ戦は「天王山」ともいうべき首位攻防の大決戦だったが、オリックスは宮城大弥、ロッテは佐々木朗希が先発。同世代による頂上対決となった。

 筆者は佐々木のマウンドを初めて見たが、足を胸のあたりまで高々と上げ、スパイクの裏側を見せつけてから一気に投げ込む勇壮なフォームに感動した。

まるで「宇宙戦艦ヤマトの波動砲」のように

 同じ大型投手でも藤浪晋太郎は打者をねじ伏せる圧倒的な力感があった。大谷翔平の右腕はすさまじい切れ味を感じたが、佐々木には「宇宙戦艦ヤマトの波動砲」のように全身の躍動を指先の一点に集中させるメカニカルな美しさがあった。

 残念ながらこの対決では宮城が早々に打ち込まれ、佐々木の勝利に終わった。しかし奥川も含めた3人の投手は今後も名勝負を繰り広げるだろう。

 21世紀最初の年である2001年に生まれた3投手の世代を「何世代」と呼ぶのか。それはこれからの彼らの活躍にかかっているようだ。

 プロ野球に新たな楽しみができたと言えるのではないか。

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