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奥川恭伸はヤクルトの田中将大になれるか? “どれだけホームランを打たれても”ファンが温かく見守るべき理由
posted2021/03/30 11:02
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Kyodo News
亡き名将を偲ぶ「特別な試合」のマウンドに立った19歳に、運命的な思いを抱いたヤクルトファンも多かったのではないだろうか。
昨年2月に84歳でこの世を去った野村克也氏の追悼試合として行われた3月28日の阪神3回戦に、プロ2年目のヤクルト・奥川恭伸投手が先発した。やんちゃそうな瞳の面差しはどこか、野村氏の最後の愛弟子ともいえる田中将大(楽天)と似ている。奥川はプロ2試合目の登板ながら、田中と同じく本格派右腕である甲子園スターの出発点を名将が“見守る”形となったのは何かの因縁だろうか。
結果は5回74球を投げ5安打3失点5奪三振。用意された物語のように最高の舞台でプロ初勝利、とはならなかったが、確かな才能と成長はしっかりと証明してみせた。
フライアウトが多い投手の宿命は
特筆すべきは、フライアウトの多さだ。奥川が奪った15個のアウトのうち、飛球は8。5つは直球を打ち損じたものだった。この日の神宮上空は右翼から左翼方向に強風が吹く気象条件だったが、対する阪神先発のガンケルは奪った18個のアウトのうち、ゴロアウトが9(フライアウトが4)だったことを鑑みれば、特徴が如実に表れた投球内容だった。
昨年から黄金ルーキーを見続けてきたセ・リーグ球団のスコアラーが証言する。
「奥川のストレートはホップ成分の球質が特徴的なのでフライアウトが増える。球が伸びるので空振りやファウルも取れるんですが……」
そう、ロマン溢れるそのスタイルの宿命は……。
「フライボーラーなので、長打、特にホームランとは背中合わせなんですよ」