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【プロ2年目の飛躍】オリックス宮城大弥(19)がマウンドで見せる“違う顔”とは? “ドラ1後輩”山下へは「自分をしっかり持っとけよ」
posted2021/04/17 17:03
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Sankei Shimbun
これほどギャップが魅力的な選手もいないのではないか。オリックスの2年目左腕・宮城大弥である。
沖縄県の興南高校から、昨年ドラフト1位で入団した19歳。普段は朴訥、純粋というイメージで、取材の受け答えはまだ初々しい。
しかしマウンドに上がると、ベテランのように老獪な投球で打者を手玉にとる。2年目の今年はオープン戦から抜群の安定感で開幕ローテーション入りをつかみ、開幕2戦目の先発を任された。
開幕戦にエース山本由伸を立てながら敗れた翌日、宮城は守備のミスに足を引っ張られながらも、7回2失点と踏ん張りチームに今季初白星をもたらした。2度目の登板となった4月4日の楽天戦では8回2安打無失点の好投で今季2勝目を挙げた。
マウンドに上がれば別人になる
昨年1月、プロになったばかりの宮城は、舞洲の球団施設の中をいつも走っていた。
「大阪、寒いので。(走って)あったかくなりたいので」
沖縄出身の宮城にとって、寒風吹きすさぶ舞洲の寒さは耐え難かったようだ。寮とグラウンド間の移動など、とにかく外にいる時はいつも走っていた。時には誰かにいたずらをして逃げ回ることも。
「今日は紅林(弘太郎)のバットを持って逃げました。そうしたら相手も追いかけてくるじゃないですか。1人で走るより、そのほうが楽しいし、あったまるので」
そう言ってニコニコ笑っていた。あまりに微笑ましくて、こちらもつい笑ってしまったが、同時にそのあどけなさがちょっと心配にもなった。
だが、マウンドに上がれば宮城は別人になる。どんな時も表情を変えることなく、キレのあるストレートに、精度の高い変化球を織り交ぜて打者を打ち取っていく。昨年はウエスタン・リーグで13試合に登板し、チーム最多の6勝を挙げた。シーズン終盤には一軍で3試合に先発し、11月6日のホーム最終戦でプロ初勝利を飾った。一軍の試合でも、緊張や動揺をまったく感じさせない堂々としたマウンドさばき。本人は「顔に出ないだけで、内心はドキドキしています」と言うが、高卒1年目とはとても思えない姿だった。