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森保ジャパンを“攻略”したメキシコ五輪代表コーチ(分析担当)が明かす日本の強みと弱み「平均を出したら、日本のほうが上ですが…」 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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posted2021/10/06 11:00

森保ジャパンを“攻略”したメキシコ五輪代表コーチ(分析担当)が明かす日本の強みと弱み「平均を出したら、日本のほうが上ですが…」<Number Web> photograph by Getty Images

試合後、人目を憚らず大粒の涙を流して悔しさを露わにした久保建英。得点を喜ぶメキシコを背に何を思っていたのだろうか

――僕の印象としては、2得点を含め20分くらいまでは日本もうまく戦えていたと思います。4-2-3-1の日本と4-3-3のメキシコだと、互いの中盤の3枚が噛み合うわけですが、それも日本のほうが優位に立っていたかなと。でも、20分過ぎくらいからはメキシコが盛り返した。8番(カルロス・ロドリゲス)や17番(セバスティアン・コルドバ)が日本のライン間にうまく立つようになったり、8番と7番(ルイス・ロモ)がポジションを入れ替わったり。そうした試合中の修正や主導権の握り返し方がうまいと感じました。

西村 試合中、ベンチからは「もっと簡単に、素早くボールを動かせ」と伝えていたんです。試合後に映像を見返したときにも、そうしていればもっと自由にプレーできたな、というシーンが何度もあった。おそらく最初に2点を入れられて、勝ちたい気持ちが空回りして、一人ひとりが解決しようとしてギクシャクしてしまったんだと思います。

 ロモとロドリゲスのポジションチェンジは、完全に彼らの判断ですね。ロモの一番の強みは背後への飛び出しや、前のほうで攻撃に絡むプレー。逆にロドリゲスはボールをさばけるし、後ろでサリーダ(・ラボルピアーナ/攻撃を組み立てる際にボランチが最終ラインに落ちること)してビルドアップを助けるのもうまい。僕らも「ポジションを入れ替えても、配置が守られていればオーケー」と常に話しているので、彼らがピッチ内で感じ取ってやったことだと思います。

――結果、2-1で日本が勝利しましたが、このグループステージでの対戦はどのように分析されたのでしょう?

西村 勝った負けたというより、日本が10分間で2点を入れて、それ以降セーフティに試合を進めたのと、2点を先行された僕らに火がついたところが噛み合った面があると思います。内容としては、おっしゃったように悪くなかったので、このレベルの試合では最初の10分とか、一つひとつのプレーに集中しないと試合が決まってしまうという教訓になりましたね。と同時に、退場者が出て10人になっても一人ひとりがしっかりプレーできていたので、常にこれくらい各々がやれれば決勝でリベンジして金メダルを取れるぞ、ということも感じられた試合でした。

――3位決定戦で日本との再戦が決まったときの心境は?

西村 リベンジせずには帰れない、というのがチーム全体の気持ちでした。

「日本は良くも悪くもゲームモデルを変えない」

――グループステージでの対戦のあと、日本のニュージーランド戦やスペイン戦の分析を踏まえて、何か変更したことはありましたか?

西村 特にないですね。グループステージの試合でやろうとしていたこと――選手の配置、ボールの動かし方、ゴール前の攻防――を今度はしっかりやろうと。日本の選手は戻りがすごく速いし、一度しっかりブロックを作られるとみんな頑張るので厄介だから、そうなる前にさっさとダメージを与えろと。もっとレベルを上げていこう、ということを確認しました。

――グループステージとの違いとして、日本の2ボランチ、遠藤航選手と田中碧選手へのメキシコのアプローチ、囲い込みが非常に早まったように感じました。3位決定戦では彼らがかなりボールロストさせられた印象があります。

西村 日本は良くも悪くもゲームモデルを変えることはないだろうと。それは同じ日本人としてわかっていたので(笑)。絶対に同じことをやってくると思っていました。そういった意味では、その中盤のふたりや、堂安選手、久保選手をしっかり抑える。ボランチのふたりにボールを持たれるよりはセンターバックに持たれたほうがダメージがない、ということは話していましたね。

――ひとつ気になっていたのが、10番のディエゴ・ライネスについて。グループステージでは日本はライネスを抑えたと思います。その後の試合ではライネスではなく15番の選手(ウリエル・アントゥナ)が先発する機会も多かった。でも、3位決定戦でライネスを先発起用したのは、あえてでしょうか?

西村 あえて、ですね(笑)。というのも、今回は競争力の高いチームで、中でも右のウイングのポジション争いは激しく、どちらが出ても特長を出してくれると。決め手としては、ライネスはすごく負けず嫌いなんですね。グループステージの日本戦ではおっしゃったとおり、抑え込まれ、その後の試合ではベンチスタートも経験した。だから、3位決定戦で起用したら、「何かやってくれるんちゃうか」っていう(笑)。それと、ライネスを入れたら日本は警戒してくるだろうから、逆手にとって他のところから攻略しようという狙いもありました。さらに、絶対に僕らが先制すると思っていたので、そうしたら日本が前に出てきて、オープンな展開になると。そこでアントゥナを途中出場させて、彼のスピードで背後を狙いたかったというのが理由です。

攻守で課題となったセットプレー

――3位決定戦は、PKも含めて3点ともセットプレーからの得点となりました。日本としてはニアに入ってくる3番(セサル・モンテス)をかなり警戒していましたが、まんまと裏をかかれた形です。セットプレーの狙いや対策はどうだったんでしょうか。

西村 代表チームは活動時間が限られているので、セットプレーがすごく大事だと僕らは思っていて。代表だからこそいいキッカーを選べるし、中に入る選手もいい選手を選べるから、「セットプレーをもっと大事にしなあかん」という話をしていて。予選からずっと練習してきたところなので、最後の試合でしっかり結果に出たのはスタッフ陣としてもうれしかったですね。

――逆に言えば、日本は6試合でセットプレーから1点も決められませんでした。

西村 日本の試合を分析していても、ベーシックなものしかなかった印象です。3位決定戦の最後にひとつやられそうになりましたけど(笑)。例えば、僕らの場合は対戦相手の守り方やマークの仕方を見ながら微調整するんですけど、日本のセットプレーにはそれが特に見られなかった気がします。いいキッカーもいるし、背の高い選手も揃っているので、もったいないなと僕は見ていました。3位決定戦の終盤に旗手(怜央)選手が迎えた決定機のように、日本人の規律を守る能力を活かしてセットプレーをもっと有効にできるんじゃないかと思います。

――なるほど。最終予選を戦う日本代表にとっても課題になりそうですね。

【次ページ】 銅メダルのためのアプローチ

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