甲子園の風BACK NUMBER
プロスカウトがココだけに語る「甲子園で評価を上げた6人」 智弁学園・前川右京以外で「確実にドラフト指名される」選手の名は…
text by
間淳Jun Aida
photograph byHideki Sugiyama
posted2021/09/02 11:03
2本塁打を放って智弁学園の準優勝に貢献した前川右京。彼以外にもプロが注目した選手は多い
(2)北海・木村大成投手
二松学舎大付の秋山投手とタイプは違うが、もう1人目立ったのが北海・木村投手だった。身長180センチ、76キロと恵まれた体格で、直球の最速は150キロ。球威のある直球と組み合わせるスライダーもキレがあり、高校生ではなかなか打てない。
コントロールにばらつきがあって四球で走者をためるのは課題だが、決して制球力が悪いわけではない。直球でもスライダーでも三振が取れる、奪三振率の高さは大きな魅力。指導や練習では身に付けられない潜在能力や伸びしろを感じさせる。
今大会は初戦で神戸国際大付に1-2で敗れて、1試合だけの登板となったが、センバツからの成長は示した。投球フォームのバランスやリリースポイントが安定していたし、直球の平均球速も上がっていた。
それから、センバツでは投げていなかったチェンジアップを覚えていた。格段に良くなった直球とスライダーに加えて、チェンジアップを操れるようになれば投球の幅が広がる。順調にプロの階段を上っていけば、3年から5年後にローテーションの一角を担える投手になる可能性が十分にある。
(3)智弁学園・前川右京外野手
プロ注目と言われる重圧や相手チームの警戒がある中で、評判通りの打撃だった。計6試合で打率.455、2本塁打、7打点は立派な数字。スイングスピードが速く、本塁打は2本とも高校生とは思えない打球だった。前川選手の長打力は今さら言及する必要はないが、対応力の高さにプロで成功する資質を感じた。
今大会は8月9日の開幕が、いきなり順延され、その後も雨による日程変更が続いた。決勝戦は29日まで延びたが、これだけ長い期間、選手が調子を維持するのは難しい。実際、前川選手も準々決勝の時には調子のピークを過ぎているのが明らかだった。自分のイメージと体の動きが一致せず、内角への反応が遅れたり、打ち損じが増えたりしていた。
それでも、決勝では3安打を放った。長打を警戒する智弁和歌山バッテリーの組み立てを読んで、バットをコンパクトに振っていた。低めの変化球にもうまくバットを合わせ、調子が上がらない中でのバッティングを見せた。