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《甲子園》投打に大谷翔平の影響? 「内角攻め」&「引っ張り打法」のトレンドは高校野球の“新常識”になるのか
posted2021/09/02 06:00
text by
小関順二Junji Koseki
photograph by
KYODO
“智弁対決”を制した智弁和歌山高の快進撃で注目された今大会、プレーで目立ったのはピッチャーの「内角攻め」だった。
筆者がそれを意識したのは8月12日(大会2日目)の第4試合、東北学院高の伊東大夢(3年)のピッチングを見てからである。下馬評では優勝候補の一角に入っていた愛工大名電高を8安打、3失点に抑えた。この試合を機に、打者の内角ゾーンから目を離せなくなった。
内角を上手く突いた伊東のピッチングを象徴したのは2個の死球だ。この傾向は翌日以降も続いた。
県岐阜商vs明徳では5個のデッドボール
15日(大会3日目)の第2試合でも技巧派左腕・野崎慎裕(県岐阜商高・3年)が2個、代木大和(明徳義塾高・3年)が3個も死球を与え、第3試合は死球こそ少なかったが神戸国際大付高の阪上翔也(3年)と楠本晴紀(2年)の両投手、そして北海高・木村大成(3年)が互いに執拗な内角攻めで好投し、2-1のロースコアゲームを演じた。
ちなみにこの日の第1試合では、大会No.1右腕と評された風間球打(ノースアジア大明桜高)がスライダー、フォークボールも駆使した内角攻めを披露し、帯広農高を2失点に封じている。風間は秋田県大会の決勝・秋田南高戦でも最速153キロのストレートとともに変化球を交えた内角攻めが際立ち、速いだけのピッチャーではないと強く印象に残っていた。見事、その格の違いをしっかりと甲子園のマウンドでも見せてつけてくれた。
16日(大会4日目)の第2試合ではプロ注目の深沢鳳介(専大松戸高・3年)が逆方向に変化するシュートとスライダーを武器に左右打者の内角を効果的に攻め、第4試合では渡辺翔真(盛岡大付高・3年)が強打の鹿島学園高を内外角の揺さぶりで5安打完封に抑えた。
17日(大会5日目)には、8回途中で降雨コールド勝ちした大阪桐蔭高の松浦慶斗(3年)が足場の悪い中、左打者の胸元をストレートで突く攻撃的なピッチングを披露。それ以降も森下瑠大(京都国際高・2年)、秋山正雲(二松学舎大付高・3年)といった技巧色の強い左腕が緩急、内外角の揺さぶりを徹底して完封劇を演じている。
春のセンバツ大会でも小園健太(市和歌山高・3年)、伊藤樹(仙台育英高・3年)、達孝太(天理高・3年)、石田隼都(東海大相模高・3年)らの内角攻めが注目されたが、今大会のピッチャーは外角勝負の伏線としての内角攻めを使うのではなく、「最初も最後も内角」というほどの徹底ぶりで打者たちを翻弄した。