ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
〈ブンデス現地取材〉“ワクチン接種者優先”で大声援・ビール・3密が復活… 長谷部誠と鎌田大地のフランクフルトが厳しい船出の理由
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2021/08/28 17:00
ドイツ杯1回戦で敗れ、リーグ戦開幕2試合で1分け1敗。フランクフルトはチームを立て直せるか
鎌田と長谷部が入ってから起きた現象とは
続くブンデスリーガ開幕戦のアウェー、ドルトムント戦は、地力の差を見せつけられて2-5と大敗。唯一の好材料はイタリアのミランからローン移籍してきた21歳、ノルウェー人FWイェンス・ペッテル・ハウゲが、途中出場からいきなりゴールを挙げたことくらい。なお、我らが鎌田大地、長谷部誠は両者ともスタメン出場しましたが、劣勢を覆せず途中交代に終わりました。
公式戦連敗でアウクスブルクを迎えたアイントラハトは、ホームチームらしく果敢に攻め込みましたが、その攻撃手段はほぼカウンターに絞られました。
昨季まで左サイドの槍として甚大な貢献を果たしてきたフィリップ・コスティッチが、窮屈そうにインサイドエリアでのプレーを強いられたり、新加入した攻撃的MFイェスパー・リンドストロームがパス配球に苦しんだり、同じく新加入で1トップを務めたラファエル・ボレが孤立するなどスコアレスドロー。グラスナー監督体制のチームはまだまだ課題が山積みであることを露見させていました。
一方、アウクスブルク戦では鎌田が70分から、長谷部が80分から途中出場しましたが、このふたりがピッチに立つとチームのプレーテンポが良い意味でスローダウンしたように感じました。
鎌田の巧みなキープと長谷部の正確無比なフィード
鎌田は敵陣深くで巧みなボールキープを駆使して起点役となり、ボランチで起用された長谷部は正確無比なフィードで広角にボールを動かしていました。鎌田が相手陣内中央でプレーアクションを起こすことで、左のコスティッチも同エリアでの仕掛けに専念できるようになった気もしました。
ただし、昨季までヴォルフスブルクを率いたグラスナー監督はあくまでもハイテンポを選手たちに課しているように感じます。グラスナー監督は現役引退後にレッドブル・ザルツブルク(オーストリア)の経営部門に従事しましたが、当時同クラブのSDを務めていたラルフ・ラングニックに素養を見込まれて指導者に転身した経緯を持ちます。
すなわち、グラスナー監督は純正の『ラングニック派』と称される指揮官であり、そのDNAはラングニックSDが築き上げたRBライプツィヒなどの『レッドブル・グループ』に通底する、『パワーフットボール』の概念が貫かれているように思うのです。
今季のアイントラハトが今後、どのようなチームスタイルを標榜するのか。そのなかで長谷部や鎌田がいかに融合して、その存在意義を示すのか。今季はそんなチームと個人の成長譚を、つぶさに観察したいと思います。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。