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〈ブンデス現地取材〉“ワクチン接種者優先”で大声援・ビール・3密が復活… 長谷部誠と鎌田大地のフランクフルトが厳しい船出の理由 

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島崎英純

島崎英純Hidezumi Shimazaki

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posted2021/08/28 17:00

〈ブンデス現地取材〉“ワクチン接種者優先”で大声援・ビール・3密が復活… 長谷部誠と鎌田大地のフランクフルトが厳しい船出の理由<Number Web> photograph by Getty Images

ドイツ杯1回戦で敗れ、リーグ戦開幕2試合で1分け1敗。フランクフルトはチームを立て直せるか

重要視される『ワクチン接種』の条件

 このように、今季のブンデスリーガを観戦するためには『ワクチン接種』という条件が重要視され、観戦者自身の身元も明らかにしなくてはなりません。それはアウェーチームのサポーターにも適用されるもので、今回のアウェーサポーターのチケット数は350枚に制限されました。したがって遠方から鉄道を乗り継いでスタジアムへ来る観衆は少なく、平時のようにフランクフルト中央駅に両サポーターが入り交じる光景にはならなかったと考えられます。

 ヨーロッパ諸国の大半はワクチン接種推奨の流れが加速していて、接種率も高い水準を維持しています。今後ドイツは厳しいロックダウン処置を取らず、ワクチン接種の有無による行動制限解除への流れに落ち着くようです。ブンデスリーガの入場制限もその一環で、背景には国内の経済状況回復が念頭にあります。

 約1シーズン半にわたって無観客試合を強いられたブンデスリーガ各クラブは、財政難に直面しています。主たる収入源である観戦チケットを販売できなかったなかで、シーズンチケットホルダーの大半がチケット代金の返金を辞退するなどしてクラブを支えていますが、それでもダメージが甚大なのは明らかです。

有観客試合をすべてのファンが賛成しているわけではない

 一方、今季のブンデスリーガ観戦に際してすべてのファン、サポーターが諸手を挙げて有観客試合に賛成しているわけではありません。

 ちなみに、今季ブンデスリーガ1部のホーム初戦チケットが完売したのはバイエルン、SCフライブルク、レバークーゼン、グロイター・フュルト、ドルトムント、ボルシアMG、1FCケルン、ビーレフェルト、ウニオン・ベルリンの9クラブに留まりました。

 僕が取材したアイントラハトはコロナ禍前には毎試合チケットが完売していましたが、今回は2万5000人の入場制限のなか前売りチケットは2万2000枚しか売れませんでした。先述した通りシーズンチケットホルダーへの優先販売を実施しましたが、約3万2500人に及ぶシーズンチケットホルダーのうち、5分の1にあたる6500人がクラブからの申し出を辞退したのです。

 クラブはその後、一般販売により3000枚の当日チケットを販売しましたが、チケットの購入者は約300人に留まったそうです。

 これは先述した『3Gルール』の徹底による観戦条件の厳しさや各種登録の煩雑さなどの影響以外に、純粋に『3密』と称される空間での観戦にリスクを感じる方々が多いからだと分析されています。ほぼ1年半にわたり自宅でのサッカー観戦が常態化したなか、ドイツのサッカーファン・サポーターの間でも観戦様式の変化、さらにはライフプランニングにおける優先順位の変容が示唆されています。

 さて、試合当日のスタジアムの様子はどうだったのでしょう。

【次ページ】 屋台でビールが飛ぶように売れて、完全な3密だが

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