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W杯予選敗退から3年…イタリアのルネサンス “進取の攻撃性+伝統の堅守・鋭利なカウンター”融合で鬼門スペイン撃破 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byJustin Tallis/Getty Images

posted2021/07/07 17:02

W杯予選敗退から3年…イタリアのルネサンス “進取の攻撃性+伝統の堅守・鋭利なカウンター”融合で鬼門スペイン撃破<Number Web> photograph by Justin Tallis/Getty Images

スペインを下して決勝進出を果たしたイタリア。ついに青の軍団がルネサンスの時を迎えた

 序盤から似たスタイルとシステムがぶつかり合い、どちらも低い位置から短いパスをつなぎ、相手はそれをハイプレスで摘もうとする。この試合前にも国歌を熱く歌い上げたイタリアの面々は(それにしても士気の高揚にあれほどうってつけの国歌はほかにないだろう)、気持ちのこもったプレーで最初の10分ほどはやや優位に立ったが、次第に本家のパス回しを追いかける立場に。

 スペインはポゼッションをより高めるべく、前線の中央に今大会を通して先発してきたアルバロ・モラタではなく、偽9番的にダニ・オルモを配し、これが奏功。13分には驚愕の18歳、ペドリがボックス内にスルーパスを通し(こんな挑戦的な縦パスを何度も送りながら、前半のパス成功率は100%。途轍もない才能だ)、続いてニコロ・バレッラのパスミスからフェラン・トーレスが枠外へシュートを放つ。そして25分には、ダニ・オルモが至近距離から狙い、先制点かと思われたが、22歳の若き守護神ジャンルイジ・ドンナルンマが驚異的な反応で防いだ。

本来の“伝家の宝刀”、鋭利な逆襲が発動

 前半の決定機はそれくらいだったが、後半は息もつかせぬ展開に。そして気がつけば、攻勢をかけるスペインに、受けて立つイタリアと、両者の本来の文化と伝統がピッチ上に描かれていく。52分には、今大会であらためて存在価値を高めたセルヒオ・ブスケッツが、ボックス付近まで駆け上がり、フリーでシュートを放つも枠外に。

 すると耐えるイタリアは60分、伝家の宝刀、すなわち鋭利な逆襲から、ついに先制点を奪う。

 GKドンナルンマから、マルコ・ベッラッティ、ロレンツォ・インシーニェを経由したカウンターは、チロ・インモービレには繋がらなかったが、こぼれ球を拾ったフェデリコ・キエーザが、ボックス左から右足でファーサイドのネットにシャープな一発を沈めた。オーストリアとのラウンド16でも、澱みのない一連の動作から見事なボレーを決めていた23歳は、ここでもスムーズな動きで大役を果たした。主要大会での得点数は、EURO96で1点を決めたレジェンドの父エンリコを、すでに抜いたことになる。

 だが、ルイス・エンリケ監督に反骨心とインテンシティを叩き込まれたスペインも引き下がらず、80分に途中出場のモラタが決めて同点に。持ち込まれた延長では、疲労の色が滲む両チームともに決め手を欠き、勝負はPK戦に委ねられた。

【次ページ】 PK戦は奇しくも、13年前と同じ……

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マルコ・ベッラッティ
ロレンツォ・インシーニェ
ロベルト・マンチーニ

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