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W杯予選敗退から3年…イタリアのルネサンス “進取の攻撃性+伝統の堅守・鋭利なカウンター”融合で鬼門スペイン撃破
posted2021/07/07 17:02
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Justin Tallis/Getty Images
スペインから奪ったこのPK戦の勝利は今後、イタリアの復権にとって、もっとも重要な白星と捉えられるようになるかもしれない。ちょうど3大会前の準々決勝で、スペインがPK戦の末にイタリアを破り、後に始まる全盛期の扉を開けたように。
13年前と比べると、両チームの立ち位置は真逆だ。当時のスペインはイタリアに公式戦で80年以上も勝てていなかったし、それまでは主要大会でベスト8の壁がいつも立ちはだかった。一方のイタリアは、その2年前のW杯を制した世界王者だった。
ガチガチな守備戦術からの脱却
その後、スペインはEURO2008、2010年W杯、EURO2012を3連覇。同じ時期にクラブレベルでは、同国出身のペップ・グアルディオラが代表にも通じる手法で欧州と世界を席巻。スペイン発祥の“ティキタカ”(チックタックとリズム良くパスを回すことから)と呼ばれるスタイルは、世界中の代表やクラブチームに模倣されていった。
ドイツ、イングランド、そしてイタリアも、彼らに倣った。
2010年W杯でグループステージ敗退に終わると、イタリアはアリーゴ・サッキを育成責任者に任命。近代戦術の始祖と呼ばれる御大は、スペインをモデルに若手を育てていった。それは若者たちに自由を与え、のびのびと自らを表現させることであり、かつてのイタリアのように、若いうちからガチガチな守備戦術を叩き込むことからの脱却でもあった。
それから10余年、イタリアはまさにルネサンスを遂げている。
3年前のロシアW杯出場を逃し、底を打ったアッズーリが魅惑的な手法で蘇生する姿は、今大会の最大の見どころのひとつだ。準決勝ではベルギーを下し、強豪国との試練も乗り越えた。32試合無敗と新記録を打ち立て、目下13連勝中で迎えた準決勝の相手は、ずっと背中を追いかけてきたスペインに。相手も全盛期を過ぎたとはいえ、EURO2008での敗北以降、公式戦で6回対戦し、1度しか勝てていない宿敵だ。