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エリクセンはメンバーに残したまま、イングランドとの決戦へ…寒村育ち“バイキングの末裔”デンマークの勇猛果敢な戦い
posted2021/07/07 17:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
ユトランド半島は燃えている。
EURO2020でデンマーク代表が29年ぶりの欧州4強入りを果たした。1992年に優勝した伝説の同国代表チーム“ダニッシュ・ダイナマイト”以来の快挙だ。
7月3日、バクー(アゼルバイジャン)で行われた準々決勝でデンマークは伏兵チェコを2-1で破った。勝どきをあげた主将シモン・キアルの言葉に熱がこもる。
「代表全員が勝利に飢えている。見ていてくれ。この先も俺たちのサッカーをグラウンドで見せるから」
大会ベスト4に残ったイタリアとスペイン、そしてイングランドは5大リーグを有する伝統国だ。彼らに比べて、デンマークがアウトサイダーであるという印象は否めない。
だが、“エリクセン・ショック”と開幕2連敗の後、欧州4強に上り詰めた戦いぶりは勇猛果敢そのものだ。
村の商店でアタランタのユニフォームが100枚も売れた
バイキングの末裔である彼らの、デンマーク・サッカーの源はどこにあるのか。
MFヨアキム・メーレの実家は、針葉樹林に囲まれた北部の寒村にある。人口1300人のオステルブラ村にスポーツ用品を扱う店は1軒しかない。今年の1月、村出身のメーレがセリエAのアタランタに移籍したときは大出世だと騒ぎになった。村の商店でアタランタのユニフォームが100枚も売れた。
EUROで先発出場を続けるメーレがロシア戦とウェールズ戦で連続ゴールを決めると、「村の名が国中に広まって、村民全員てんやわんやでひっくり返った」(実兄ダニエル)。
小さな頃からテレビゲームより外でボールと遊ぶ方が好きだったヨアキムは、村のアマチュアチームのGKとして還暦過ぎまでプレーし、後に会長も務めた祖父をこよなく愛した。ウェールズ戦が行われた先月26日は、2年前に他界した祖父の命日だった。
静かな山村のこぢんまりとした広場にも、控えめなプロジェクトスクリーンが置かれた。メーレ一家と村人たちの歓声が濃緑の木々の間にこだました。