なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
「20代のうちに恥をかかないと辞めた後に食べていけない」 女子サッカーと仕事(1日7時間)の両立を本気で目指すクラブとは
posted2021/07/04 17:00
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Jun Aida
「プレイングワーカー」
あまり聞きなれない言葉が、日本女子サッカー界や山梨県の一部エリアに広がり始めている。そして、女子サッカーにとどまらず、プロスポーツを変革するかもしれない。
標高1000メートル。人口約3000人。富士山北麓に位置する山梨県鳴沢村に、FCふじざくら山梨は本拠地を置く。なでしこリーグ1部を頂点とする女子サッカーのピラミッドでは、6部相当の山梨県リーグ1部に所属。ただ、チームには、なでしこリーグでプレーした選手もいる。
「競技でも一流、社会でも一流であれ」
2018年に創設されたFCふじざくらには、クラブのコンセプトがある。「競技でも一流、社会でも一流であれ」。女性アスリートの新しいロールモデル「プレイングワーカー」を掲げている。アスリートと社会人のキャリアを同時に築き上げて、どちらの道でも活躍する人材輩出を目指している。
クラブの理念を体現する存在の1人、MF中塚理加(31)は名刺を2枚持ち歩く。1枚はクラブの名前やロゴが入っている。もう1枚はサッカー選手とは分からない、ごく一般的な名刺だ。「生活設備部・福祉用具課」と部署が記され、「福祉用具専門相談員」、「社会福祉主事」、「児童相談員」など、肩書きや資格が並んでいる。
「専門職なので何でも聞かれる。1人1人の利用者さんに合わせた用具の選定や提案は難しい部分もあるが、できるだけ家で生活する時間を長くするためのお手伝いをしたい」。
中塚はFCふじざくらのメインスポンサーを務める富士観光開発で、福祉用品をレンタル・販売する仕事をしている。
車いす一つとってもタイプは多様
高齢者の生活を支える福祉用品は、体の状態や、住宅・生活環境などで必要なものが変わってくる。車いす1つとっても、生活をともにする人に押してもらうのか、自分の手で車輪を回すのか、リハビリを兼ねて足も使ってこぐのかタイプが異なる。訪問前には資料に目を通してあらゆる可能性を想定し、最適なものを提案している。