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「20代のうちに恥をかかないと辞めた後に食べていけない」 女子サッカーと仕事(1日7時間)の両立を本気で目指すクラブとは
text by
間淳Jun Aida
photograph byJun Aida
posted2021/07/04 17:00
働きながらサッカーに打ち込む「FCふじざくら山梨」の選手たち
プレイングワーカーを追い求められる土台とは
仕事の時間を長くするだけではなく、クラブでは社会人に必要なスキルや論理的な考え方を身に付ける勉強会も定期的に行っている。さらに、サッカーにも仕事にも生かせるスポーツドクターによるメンタルトレーニングや、学び続ける習慣をつけるために読書感想文を提出させるプログラムも組んでいる。
「プレイングワーカー」を追い求められるのは、メインスポンサーである富士観光開発の存在が大きい。地元で60年以上の歴史を持ち、事業はスポーツやレジャー、不動産や宿泊など多岐に渡る。クラブに所属する選手は職種に選択肢が多く、それぞれの適性を活かした仕事をできるチャンスがある。さらに、トレーニングも仕事の一部として評価する人事制度も取り入れられた。
観客数、スポンサー数ともになでしこ1部と遜色ない
FCふじざくらのスポンサー数は約250社と、なでしこリーグのクラブと比べても遜色はない。観客数は1年目が700人に上り、昨年は新型コロナウイルスの影響がありながら500人を超えた。
五十嵐氏は「なでしこ1部の観客数が1000人ほど。6部相当の我々の試合にそれだけのお客さんが来てくれるというのは、女子サッカー界に可能性や努力の余地がある。今のコンセプトでトップリーグに参戦するイメージを持っているし、それを示してサッカー界のスタンダードを変えるのが、このクラブの使命」と力を込める。
中塚もクラブの理念「プレイングワーカー」を貫いて、トップリーグでプレーするのは「可能」と言い切る。工藤は「5年後に選手としてはWEリーグの舞台に立っていられるように。仕事では自分を指名してデザインの依頼してもらえるように、1人でお金を作り出せるようになっていたい」と未来を描く。
FCふじざくらが見据えるのは2025年度のWEリーグ参入。そして、その時の観客数は5000人を掲げている。目標が実現した時、「プレイングワーカー」という言葉は当たり前のように使われているかもしれない。