なでしこジャパンPRESSBACK NUMBER
「20代のうちに恥をかかないと辞めた後に食べていけない」 女子サッカーと仕事(1日7時間)の両立を本気で目指すクラブとは
text by
間淳Jun Aida
photograph byJun Aida
posted2021/07/04 17:00
働きながらサッカーに打ち込む「FCふじざくら山梨」の選手たち
また、スポンサーのスーパーとタイアップした「コラボ弁当」を立案した。見た目や栄養バランスを考え、写真やイラストを使った企画書でプレゼン。サッカー選手が作った付加価値もあり、弁当は1年半で1万8000食売れている。
過去のクラブでは“午前中に3時間だけ仕事”
今でこそ、プレイングワーカーの道を真っすぐ進んでいる工藤だが、創部当初は困惑したという。それまでに所属していたクラブでは、午前中に3時間ほど仕事をするだけだった。こうしたクラブは少なくない。
「サッカーだけやっていて社会人として何ができるのか、25歳くらいから不安や焦りがあった。ただ、どうやったらやりたいことが見つけられるのか、お金を生み出す仕事ができるのか分からなかった」
セカンドキャリアが見えないまま、年齢を重ねていった。27歳の時に一度は引退を表明し、実家の青森県で農業をつごうと思っていたという。ところが、縁あって初年度からFCふじざくらに加入すると、仕事への考え方は大きく変わった。
「自分の得意なことを活かせる仕事や、お金の稼ぎ方を知った」
サッカー選手としても、社会人としても、どうやって自分の価値を高めるか主体的に考えるようになった。勤務時間が長くなったからこそ、サッカーへの向き合い方が深くなり、選手としての成長も感じている。
1週間のスケジュールはどうなっている?
FCふじざくらでは火曜から金曜まで毎日7時間前後、それぞれの職場で勤務してからトレーニングを行う。土曜と日曜はサッカーに専念し、月曜が休日となる。
他のクラブと比較すると厳しく見える環境。クラブ立ち上げの中心を担い、「プレイングワーカー」の理念を打ち出した五十嵐雅彦クラブブランドマネージャーは「1日3~4時間の勤務であればサッカーに残す体力はあるかもしれないが、それだけの時間で社会人として結果を残すのはどんな人でも難しい。それでは、引退した時に何も得られないまま社会に出ることになってしまう。6~7時間現場にいれば、役割を持ち責任感が培われる」と意図を説明する。