熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
昔はデコにマルコス・セナ、今もペペにジョルジーニョ、チアゴ… EUROを彩る“ブラジル出身名手”の根性がカッコいい
posted2021/06/19 17:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Takuya Sugiyama
ポルトガル代表の守備の重鎮で、2008年から4大会連続出場しており、前大会優勝メンバーのCBペペ(ポルト)、イタリア代表の2列目中央に君臨し、昨季、チェルシーの主軸として欧州CL優勝に貢献したボランチのジョルジーニョ(チェルシー)、スペイン代表の中盤で攻守に貢献し、2019年にバイエルン・ミュンヘンの主力として欧州CLを制覇しているMFチアゴ・アルカンタラ(リバプール)、ロシア代表の不動の右SBマリオ・フェルナンデス(CSKAモスクワ)、ウクライナ代表の技巧派MFマルロス(シャフタル・ドネツク)、そしてイタリア代表の控え左SBエメルソン(チェルシー)と控えCBラファエル・トロイ(アタランタ)……。
今年のEURO(欧州選手権)に5カ国から出場しているこの7人は、いずれも"ブラジル人選手"である。
アルカンタラ以外は全員、ブラジル生まれ。またアルカンタラの父親は、元ブラジル代表右SBで1994年ワールドカップ(W杯)優勝メンバーのマジーニョだ。
皆、若くして欧州へ渡り、キャリアを積み、生活の基盤を築いた。愛着を覚えた地の国籍を取得し(ただし、欧州のほとんどの国では多重国籍が認められているので、ブラジル国籍はそのまま)、新たな国の代表でプレーすることを選んだ。その中には、ブラジル代表に入るのは非常にハードルが高いので他国代表を目指す、という現実的な判断をしたケースもあったはずだ。そんな彼らの歴史を振り返っていく。
90年代~2000年にはドナート、リンキらが
史上初めて欧州選手権に出場した"ブラジル人選手"は、エネルギッシュなボランチ兼CBのドナートである。リオ出身で、バスコダガマなどでプレーした後、1988年に25歳でアトレティコ・マドリーへ。1990年、スペイン国籍を取得。1993年にラ・コルーニャへ移籍し、1994年、スペイン代表に初招集された。1996年の欧州選手権に出場したが、準々決勝で地元イングランドに延長、PK戦の末、敗れた。ラ・コルーニャでは、当時、ブラジル代表だったFWベベート、ボランチのマウロ・シウバらと共に黄金時代を築いた。
2000年大会では、屈強なCFパウロ・リンキがドイツ代表のユニフォームをまとった。ドイツ人移住者の子孫で、ブラジル南部クリチーバ生まれ。アトレチコ・パラナエンセなどで活躍した後、1997年、24歳でレバークーゼンへ。翌年、ドイツ国籍を取得し、すぐにドイツ代表へ招集された。
“第二の祖国で大成功した象徴”と言えばデコ
2004年大会に出場したMFデコは、全く無名でブラジルから欧州へ渡り、苦労しながらクラブでも"第二の祖国"の代表でも顕著な成功を収めたモデルケースだ。