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“思い出の夏”から25年、EUROで白星スタート …イングランドの人々を熱狂させる21歳の「ガッザ2世」
posted2021/06/18 17:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
EURO1996から25年。イングランドの人々は予定より1年遅れで開幕したEURO2020に、再び“思い出の夏”を期待している。
気温27度の夏日となった6月13日、約1年半ぶりに代表戦での観客動員が認められたウェンブリー・スタジアムにおいて、グループD最大の敵、クロアチアを下した白星発進により(1-0)、国民の期待感はさらに膨らんでいる。
特に、初めて立った主要国際大会の舞台で、ボールに触れるたびに観衆をざわめかせたフィル・フォデンに対する期待は大きい。フォデンは、2000年代に入って生を受けた新世代タレントの1人だ。EURO1996当時は、まだ母親のお腹の中にもいなかった。
しかし、ここ“サッカーの母国”の人々は、開催国として迎えたEURO1996で自国代表が準決勝まで勝ち進んだ一夏に思いを馳せるたびに、四半世紀が過ぎた今でも微笑まずにはいられない。宿敵ドイツにPK戦で敗れた準決勝の記憶でさえ、スチュワート・ピアースがイングランド3人目として力強くPKを決め、失敗に涙した1990年イタリアW杯での悪夢を蹴り去った歓天喜地の瞬間が、雄叫びという効果音付きで含まれているはずだ。
25年前のイングランドを思わせる一体感
今夏のイングランド代表に対する期待の高さが、3年前のロシアW杯で残した予想以上の成果に基づいているのは言うまでもない。監督も主力も若返ったガレス・サウスゲイト体制のチームは、EURO1996以来となる国際大会ベスト4入りを果たしたのだった。
その指揮官は、CBとして準決勝までの全5試合にフル出場した「96年代表」の1人で、ドイツ戦で最後のPKを止められた悲劇の主人公でもある。
監督として臨むコロナ禍のEUROは、グループ首位通過なら準々決勝の1試合を除いてウェンブリーに相手国を迎えるイングランドにとっては限りなく母国開催に近い決勝までのルートだ。
ガレスのイングランドとして2度目の国際大会に挑むチームはムードの良さを漂わせている。テリー・ベナブルズ体制下で一丸となっていた、25年前のイングランドを思わせる一体感が国民に“熱い夏の再来”を予感させる最大のポイントだ。