甲子園の風BACK NUMBER
高校野球のマネージャーに憧れていた女子高生がプレーヤーに やってみて気づいた「将来を考えるきっかけ」って?
posted2021/05/27 17:01
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Jun Aida
今年4月、静岡県初の高校女子硬式野球部が生まれた。東海大付属静岡翔洋の弓桁義雄監督や村上英治校長は女子野球、女子スポーツの受け皿をつくる大切さや意義を「固定観念や先入観にとらわれず、可能性を広げるため」などと説いた。
実際にプレーする選手たちも、野球を通じて新たな価値観や可能性を見出している。立ち上げメンバーとなった2年生3人のうちの1人、齊藤美咲主将は高校に入学して初めて野球部に入った。父や弟が野球をしていたこともあり「自分もやりたい」と思っていたが、地元に女子がプレーできるチームがなく、小学校はバレーボール部、中高校ではソフトボール部に入った。
主将は当初、マネージャーに憧れていた
野球を身近に感じていた齊藤主将は高校野球のマネージャーに憧れていたという。その夢を実現させるつもりで伝統の縦じまを選んだが、弓桁監督から女子野球部に誘われた。
「野球部のマネージャーは小さい時からの夢だったので、本当に悩んだ。自分で野球をやってみたい気持ちもあったが、部員が集まるか不安もあった。でも、創部に関われる機会は絶対にないと思って、野球をやる道を選んだ」
ソフトボール経験者とはいえ、硬式野球は想像以上に難しかった。打撃練習では、なかなかバットの芯にボールが当たらない。ノックを受ければ、打球が体に直撃してあざができた。
それでも、野球の楽しさを知り、チームメートと過ごす時間には充実感がある。マネージャーでなく、プレーヤーの道を選んだことで、将来の新たな選択肢も見つけた。
「将来は保育士になりたいなと思っていた。ただ、野球を始めて、スポーツ選手をメンタル面で支える仕事にも興味を持つようになった」
自分がエラーしたときに、仲間からかけてもらう言葉が大きな力となること。主将として28人の部員をまとめる中で、個々に違う悩みを抱えていることを知った。