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グランアレグリアは“行きたがる馬”から“穏やかな馬”に? 圧巻のヴィクトリアマイルの裏にあった藤沢師の采配 

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平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

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photograph bySatoshi Hiramatsu

posted2021/05/18 17:00

グランアレグリアは“行きたがる馬”から“穏やかな馬”に? 圧巻のヴィクトリアマイルの裏にあった藤沢師の采配<Number Web> photograph by Satoshi Hiramatsu

ヴィクトリアマイルで1番人気に推されたグランアレグリアは、その期待に応える圧倒的な強さで優勝した

「差されるイメージはありません」

 それでも不安な点が無いか、あえて聞くと、彼は答えた。

「末脚はしっかりしているので差されるイメージはありません。武さん(豊騎手)が乗るしレシステンシアら前の組の残り目が怖いけど、不安というほどではありません」

 昨年のチャンピオンマイラーはゲートが開くと18頭立ての丁度真ん中あたりで、レースを進めた。

「スタートが速ければ前でも良いと考えていたけど、ゆっくりだったのであの位置になりました。掛かることもなくリズム良く走れていたので、位置取りに関してはどこでも気にしませんでした」

 鞍上はそう感じていた。

「3歳の牝馬の使い方はとても難しいです」

 道中は終始絶好の手応え。これには藤沢和調教師が次のように語る。

「スピードがある馬なので若い時は行きたがる面もあったけど、年齢を重ねて穏やかになり、折り合って走れるようになりました」

 決して自分の手柄にはしない師だが、普段の厩舎での対応がそういう馬に成長させたのは間違いないだろう。それは例えば3歳時の使い方にも顕著に現れていた。桜花賞を勝ったグランアレグリアはNHKマイルC(GI)で降着の5着に敗れると、その後はしばらく休養。暮れの阪神カップ(GII)までターフに姿を見せなかった。当時のこの采配について、藤沢調教師は次のような説明をした。

「3歳の牝馬の使い方はとても難しいです。クラシック戦線があるわけだけど、3歳牝馬のほとんどは、その時期、飼い葉を食べなくなり、体を減らしてしまいます。グランアレグリアも無理しなければまだまだ成長すると思えたので、ひと息入れました」

 これが奏功したのは言うまでもない。デビュー当初450キロ台で走っていた体は古馬初戦となった高松宮記念では486キロ。秋にスプリンターズSを走る頃には504キロまで増え、今回のヴィクトリアマイルでも498キロという堂々とした体つきでの出走となった。

 フィジカルの成長はメンタル面での成長も促す。こうしてグランアレグリアはスピードをコントロール出来る馬になっていったのだろう。

【次ページ】 「乗っていても気持ち良かったです」

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藤沢和雄
クリストフ・ルメール
グランアレグリア

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