「乗っていても気持ち良かったです」

　3～4コーナーも絶好の手応えのままだったグランアレグリアの脚色は直線に向いても衰える気配が全くない。

「凄い手応えだったね」と藤沢調教師が言えばルメール騎手も「何もしていないけど、馬が自分でギアを上げて行ってくれました」。

　ギアを上げ、エンジンに火の点いたグランアレグリアはあっという間に先団を射程圏に捉えると、次の刹那、先へ行く馬達を楽に呑み込み、先頭へ躍り出た。

「分かっていたとはいえ、凄い加速力で、乗っていても気持ち良かったです」

　1週前、シュネルマイスターで制したNHKマイルC（GI）に続き、2週連続でのGI制覇となるルメール騎手は満面の笑みでそう語った。

「2000メートルがダメだとは思っていません」

　これでグランアレグリアが制したGIは5つ目。4つある古馬のマイルのGIを史上初めてコンプリートしてみせた。

「強い競馬をしてくれました。この後は無事なら安田記念（GI）に向かいたいです」

　指揮官はこう言って次走で安田記念の連覇を目指すと発すると、更に秋へ向けた言葉を続けた。

「大阪杯は馬場も向かず負けてしまったけど、あの1戦をもって2000メートルがダメだとは思っていません。東京なら1ターンで済むので、秋には天皇賞（秋）（GI、東京競馬場、芝2000メートル）に挑戦させたいと考えています」

　来年の2月には定年で厩舎を解散する伯楽にとっては出走する全てのGIが調教師として挑める最後の機会となる。ダービー馬レイデオロやフランスでGIを優勝したタイキシャトル、天皇賞（秋）や有馬記念をいずれも連覇したシンボリクリスエスら数々の名馬を育ててきた藤沢和調教師にとって、グランアレグリアが最後の傑作になるのだろうか……。

　ちなみに、昨年、話を伺った際には「来年（つまり今年）はアメリカのブリーダーズCが西海岸（デルマー競馬場）で行われるので、それも視野に入れていますよ」と語っていたが、天皇賞（秋）（10月31日）挑戦となれば、ブリーダーズCは翌週のため両取りとはいかなくなる。果たして秋の動向がどうなるのか。今後、更なる注目をしたい。