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開幕から14試合でいまだ無傷 「なぜ川崎はこんなに強いのか?」三笘の証言から考える“強さの秘密”
posted2021/05/06 17:02
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Getty Images
もう、川崎フロンターレを止められるチームはないかもしれない。
首位攻防戦となる名古屋グランパスとの2連戦。4月29日の初戦は相手ホームで名古屋の堅守を打ち破り、4-0で圧勝。5月4日の2戦目も前半31分にセットプレーで先制すると、後半にも2点を奪って、力の違いを見せ、3-2で勝利。2位の名古屋に勝ち点9差をつけた。
名古屋は、フィッカデンティ監督が新型コロナに感染し、代わりにブルーノ・コンカコーチが指揮を執り、2戦目ではシステムも4-3-3に変更して挑んだが、ミスを含めて3点を先にとられると単純に勝つのは難しい。選手交代で齋藤学、柿谷曜一朗、ガブリエルシャビエル、森下龍矢ら個の力のある選手を入れて、流れを取り戻したが、追いつくことができず、川崎戦は2連敗。勝ち点差を広げられたことはもちろん大きいが、それ以上に2試合で7失点という現実は、それまで堅守で勝ってきたチームスタイルをもう一度、見直すことになりそうだ。
川崎は、開幕から14試合を終え、いまだ無傷(12勝2分・勝ち点38)。昨年の同試合数の消化時(11勝2分1敗・勝ち点35)を上回るペースだ。しかし、川崎の鬼木達監督は、「名古屋の2試合は勝てたけど、自分たちの相手は名古屋だけではない。自分たちの突き進む道を歩んでいく」と、満足している様子はいっさい感じさせなかった。
無敗でも「満足していない」ハングリーさ
常日頃から勝利しても「満足していない」と語る指揮官の姿は、ある人とダブって見えた。「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を完成させた庵野秀明監督である。
「満足しない」、「同じものは作らない」。クリエーターとしての確固たるポリシーを持ち、常に新しいものをファンに提供する。そのためにスタッフに厳しく、自分にも妥協しない。ドキュメンタリー番組の中での庵野監督からは、ないものを生み出す難しさと対峙する執念とそこへのパワーが感じられた。
鬼木監督も就任してから川崎を毎年バージョンアップさせてきた。
風間八宏前監督の下で攻撃のベースが確立された後、守備をテコ入れして2017年に優勝を果たすと、昨年は、さらなる成長を求めてシステムを4-3-3に変更。選手の個性を生かしつつ、ポゼッションだけではなく、縦に早く攻める手も磨いていった。試合では、とにかく選手に細かく指示を出し、要求にこたえられなければ指摘し、考えさせる。その繰り返しなのだが、この細かな繰り返しの中に少しでもチームを強くしたいという意図が読み取れる。