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開幕から14試合でいまだ無傷 「なぜ川崎はこんなに強いのか?」三笘の証言から考える“強さの秘密”
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2021/05/06 17:02
開幕から14試合を終え、いまだ無傷(12勝2分・勝ち点38)の川崎フロンターレ
とあるベテラン選手が、「選手が成長しなければならないのは当然だけど、監督もアップデートしていかないといけないと思う。毎年同じ練習や同じ戦い方をしていたらチームは成長しない」と語っていた。
現状維持は衰退と同じ。
鬼木監督は個人能力を活かしつつも必要なタスクを増やし、フレッシュな血を導入するなど、毎年常にチームに刺激を入れているが、それを自らにも課している。「満足していない」という言葉は、監督の向上心の表れでもある。
三笘「フロンターレのサッカーは、やっていて楽しい」
攻撃的なサッカーは、「川崎スタイル」とも言われているが、今の川崎はスタイルの次元を超えている。スタイルとは、成果を上げるためにチームの在り方をわかりやすい目標に置き換えたものだが、もうその域にはない。風間監督時代のパスサッカーから進化し、今やポゼッションだけにこだわらず、選手が臨機応変に攻撃の手段を使い分け、まるでチームがひとつの生命体のように動いている。それは鬼木監督のチーム作りの手腕もさることながら、選手が厳しい全体練習を終えてもなお、個人練習に時間を費やす質の高い練習量と個々の意識の高さがその域でのプレーを可能にしている。
三笘薫は、「フロンターレのサッカーは、やっていて楽しい。それが見ている人に伝わるのが理想です」と語っているが、確かに川崎のサッカーは面白くて、楽しくて、強い。面白いサッカーをしていても勝てなければ認められないが、今の川崎は3拍子が揃っている。
名古屋戦でも川崎は、実に柔軟な戦い方をしていた。
王者・川崎に「隙」があるとすれば……
押される時間があったとしても自分たちの中では勝つ自信があるのだろう。選手は攻められてもあたふたせず、最後は冷静に時間を潰して勝ち切った。名古屋の稲垣祥は、「地力の差で負けた」といい、中谷進之介は「今まで無失点で積み重ねてきたものが川崎には通用しなかった。まだまだレベルが足りない」と悔しさを噛みしめていた。2位の名古屋の選手でさえ、川崎を遠くに感じているのだ。
だが、弱みがないわけではない。