ツバメの観察日記BACK NUMBER
親子で大の燕党、名前は古田から…ドラ1候補・廣畑敦也の“野球偏差値” がスゴい「もし今のヤクルトに自分がいたら…」
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph byKyodo News
posted2021/04/15 11:04
昨年の都市対抗野球、JFE東日本戦に完投勝利し、ガッツポーズする三菱自動車倉敷の廣畑敦也
「90年代のプロ野球こそ黄金期だと思っている」
作者を前にしてはなかなか批判も言いづらいだろう。褒めるしかないのも十分理解しつつ、それでもついつい頬が緩んでしまうのは自分でもわかった。
「僕としては90年代のプロ野球こそ黄金期だと思っているんです。進化した今の野球もいいけど、昔の野球にも学ぶところが多い。それこそ、野村さんの本もたくさん読んでいます。僕としても、あの2年間の日本シリーズが最高峰だということは知っていたので、夢中で読みました」
具体的にはどんな点が参考になったのか、刺激となったのか? 心地よい回答が続くことで、作者としての欲求はますます募る。質問を重ねると、廣畑は続けた。
「ピンチとチャンスの場面が色濃く描かれていた点が参考になりました。マウンドに上がっていて、ピンチの場面を迎えたとき、内心では“ここは肩の強いセンターに打たせたい”とか、“フライではなく、ゴロで仕留めたい”と思うことがあります。それは自分の身に重ね合わせても共感できたし、ヤクルト・広沢(克己)さん、池山(隆寛)さん、西武・秋山(幸二)さん、清原(和博)さんなどの一流の打者たちの打者心理は発見の連続でした」
「ノムさんが監督だった頃と、何も変わらない」
このシリーズが行われたのが、すでに30年近くも前のことになる。令和時代の実力派社会人投手の目から見て、「今の野球と比べて古いな」と思うことはあるのだろうか? そんな問いを投げかけると、廣畑は即答する。
「いや、まったく古いと感じることはなかったです。ノムさんが監督だった頃と、何も変わらないと思います。むしろ、今の野球には頭を使うことが薄れてきている感じもするので、改めてあの時代の野球を知ることは大切だと思いますね」
最速154キロのストレートと、曲がりの大きいカーブのコンビネーションを武器とする廣畑。本人は「ツーシームやカット系の小さな変化だとバットに当てられる」と考えているからこそ、「フライボール革命の現状では、自分の高めのストレートと変化量の大きいカーブは通用する」と確信している。温故知新。野球界のトレンドが変われば、かつての組み立てもまた生きてくる。彼は、そう確信している。