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「手堅すぎる、交代が遅い」と言われ続けた森保ジャパン 大勝した2連戦の裏に見えた“明確な変化”とは?
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戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJMPA
posted2021/03/31 15:45

14-0で大勝したモンゴル戦。2ケタ得点は97年6月のマカオ戦以来で、1試合14点は歴代2位である
一方で、アタッカー陣も人材豊富だ。4-1-2-3にすれば、5人のアタッカーを同時に起用できる。今回はU-24日本代表でプレーした久保建英、ケガで不参加だった堂安律は、4-2-3-1の2列目でもインサイドハーフでもプレーできる。攻撃的なオプションとして4-1-2-3をテストするのは、来るべき最終予選を見据えると有益だった。
63分には鎌田が退いて稲垣祥が入り、稲垣と遠藤のダブルボランチに戻す。2列目は右から伊東、南野、浅野の並びとなる。最終ラインには吉田麻也に代わって中谷進之介が入った。
71分には南野から古橋亨梧へスイッチし、古橋が2列目左サイドに入り、浅野が中央へスライドする。大迫が浅野の後方へポジションを下げる。最終ラインの冨安健洋もピッチをあとにし、畠中槙之輔が中谷とCBのコンビを組んだ。
これまでなかった「バックアップ層を漏れなく起用」
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19年9月の初陣からこれまで、森保監督の采配は手堅い印象を与えてきた。スタメンの選出から選手交代、さらにはシステムのチョイスも堅実で、時にそれが物足りなさを招くこともあった。海外から招集した選手を数分しか使わず、交代が遅いとの指摘も受けた。
それがどうだろう。
韓国戦で初招集の山根視来を、19年6月以来の出場となる守田を、スタメンで送り出した。海外から招集できない選手がいたからでもあるが、所属クラブでのパフォーマンスを評価しての抜てきでもある。果たして、山根は先制ゴールを突き刺し、守田は遠藤とともに中盤を力強く支配した。
この日のモンゴル戦では、右サイドバックの松原健がAマッチデビューを飾った。韓国戦で途中出場していた左サイドバックの小川諒也が、初先発を飾った。招集した20人のフィールドプレーヤー全員を、2試合を通じて少なくとも一度はピッチに立たせた。
韓国戦もモンゴル戦も、前半のうちにリードを奪った。吉田と冨安の最終ライン中央が安定感抜群で、ディフェンスに不安はない。試合の流れを変えるため、問題を改善するための選手交代が必要のない展開だったのだが、バックアップ層を漏れなく起用したのはこれまでとの明確な変化だ。コロナ禍で交代人数が5人に増えているとしても、指揮官が感じさせたのは堅実さではなかった。個々の選手の経験値を高め、チーム全体の底上げをはかる意欲である。