酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
高校野球部員が“6年で19%減”… 初センバツの公立・三島南の監督が語る「幼稚園児への普及」に力を入れる理由
posted2021/03/19 17:02
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kou Hiroo
「ちょっと面白い活動をしている高校があるんですが、観に行きませんか?」
知り合いのNPB球団職員から声をかけてもらったのは、2018年6月のことだった。
静岡県の静岡県立三島南高校の硬式野球部が、未就学児に対して「野球教室」をするというのだ。
この年の5月、日本高校野球連盟(高野連)、朝日新聞社、毎日新聞社は「次の100年」に向けた5大目標(普及、振興、けが予防、育成、基盤づくり)と24事業計画を発表した。いわゆる「高校野球200年構想」だ。
そのなかには「子ども向けティーボール教室の開催」「小中学生のための野球教室の開催」「高校生と小中学生の交流イベントの開催」などの事業が盛り込まれた。これは画期的なことだった。
高校野球部員が小・中で指導するのは原則禁止だった
従来、高校野球部員が、中学や小学校で野球指導をするのは原則として禁止になっていた。明文化されてはいないが、指導の名目で、高校が中学の有望選手に声をかけて勧誘する「青田刈り」を防ぐためだった。
事実、2017年12月には21世紀枠で翌春の選抜に出場が決まっていた川越市立川越高校が、中学生を練習に参加させ、監督も同席していたという事実が発覚し、甲子園出場を辞退するという事件が起こっている。幼稚園など未就学児童や小学校低学年への指導も積極的に推奨されてはいなかった。
三島南高校の取り組みは「200年構想」を受けたものではあったが、発表から1カ月足らず、恐らく全国で一番早いイベントだったはずだ。
筆者は当時、NPB野球振興室が小中学校の教員向けに行っている「ベースボール型」授業研究会の取材をしていた。そして三島南高校に訪れた際には旧知のNPB野球振興室のスタッフも見に来ていた。それだけ注目度が高かったのだ。